第39話
「美怜」
大佐は後ろを振りかえり、彼女を見る。
「正直に言うと、まだ完全にアンタの事を信用してないの」
美怜は部屋に入り、葛道の隣に腰をかけた。
意外と無断で入ってくるんだなと俺は思った。「聞いたわよ。腰を振りながら、彩葉に抱き着いたんだって?」
美怜は俺をゴミを見るかのような軽蔑する視線を投げかける。
「いやいや、そこまで為てないって。抱きついたのは事実だが」
「本当かしら? どうなの彩葉?」
「んー? どさくさ紛れに、胸を触られた気がする」
葛道はスマホに向かいながら、淡淡と冗談を言った。
「おおい。 俺はそこまで為てないぞ! 誤解されるような嘘はやめて」
映像の倫理協会に密告しちゃうぞ。
「本当に?」
美怜は呆れたと言わんばかりの顔をする。
いやいや、だから冗談だよ。
「嘘よ」
葛道はニヤリとしながら、言った。
「なんだ、嘘なの?」
美怜はむすっとした感じが少し増した。
案外とこの美怜という女の子は騙され安いのかも知れない。
俺は正直、この子に守られるのが不安になりそうだった。
「でも本当に油断も、隙も無いわね」
美怜はベンチに偉そうにすわる野球の監督のように腕をくみながら、こちらをにらんだ。
「あいうふうにするしか、思いつかなかったんだ。それに一応、護衛の君がいなかったからな」
「君じゃないし、美怜という名前があります」
美怜が突っかかってきた。
俺はすこし負けじと睨む。
「あんたらは小学生か」
葛道がスマホから目を離すことなく、言った。「小学生以下だな」
大佐は自信の手帳に何かを書きながら、呟くように言った。
「小学生って何よ」
美怜が虎の如く、大佐と葛道の方に叫んだ。
「いやいや、そこまで怒る必要はない。落ちつけ美怜」
大佐は表情を崩すことなく、言った。
「本来の話に戻そう」
大佐はまるで時を戻すかのような口調でいった。
「彼は今回、【デスヌード】の勧誘、もとい襲撃にあった」
大佐は胸ポケットから一枚の写真を取り出す。本当に胸から何でも出てくるなと思いながら、机におかれた写真に目を通す。
そこには襲撃してきたカウボーイならぬ、レイモンドが写っていた。
「あのカウボーイじゃないか」
俺は驚きの余り、声をあげた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます