第36話
葛道は、怪訝な顔をして問いかけた。
「それ以外の答えを必要か?」
でた、パワハラ、いやもう決定権などないやつ。
大佐は厳つい顔を変えることなくいった。
「どこでこの男を絞り上げるかは別にどうでも良いですけど、一応、ここは年頃の女の私の、部屋ですよ?」
声に怒気が孕んでいて、葛道も引かずに食いさがるようにいった。
「君の意見もごもっともだ。だが、ここはニューノーマル管轄の、部屋だ。君のとはいえど、ここは我々の共有の持ち物だ」
大佐は有無を言わせぬ声でいった。
まじで、怖いなと思っていると、大佐は、スッと自身の胸ポケットに手を入れる。
「だが、君のプライバシーを侵害して仕舞っているため、君のためにこれを持ってきた」
大佐はポケットから出したのは、手にはあまる箱だった。
俺はこれを胸ポケットのどこに入れていたんだと二度見してしまう。
気になる俺を他所に、大佐は葛道にいった。
「君へのお土産だ」
大佐はスッと彼女に差し出す。
葛道は怪訝な顔をしながら、言った。
「私、甘いの控えてるんですよ。 ダイエット中だし」
葛道は眼鏡の位置を直すと、差し出された箱を受け取った。
「君の喜ぶものだ」
大佐はまた胸ポケットに手を入れ、手帳とペンを取り出しながら、淡淡と言った。
「…………」
葛道は、ただただ、箱の封をあけ中を確認する。
「もしかして、これ……」
葛道は箱を開けた瞬間、表情が変わった。
「そうだ」
葛道が箱から取り出したのは、スマホだった。「今回の件で壊れてしまったからな。それに最新式の物に為てもらうように手配を為ておいた」
大佐は抑揚はないものの、どこか自信満々な感じで言っているように見えた。
説明する大佐を横に、葛道は箱からスマホを全て取り出し、和やかな顔で電源を入れていた。
「ありがとうございます。大佐、やっぱりイケメンだわ」
葛道がかなりのはしゃぎようで言った。
「そ、そうか……」
大佐はどこかまんざらでもない感じを厳つい顔をくずさずに言った。
いや、照れんなよ。 それに案外簡単なんだな俺は思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます