第47話 過去
縞模様の猫がにゃごにゃごと何かを呟いた。
ここは二番街にある通称猫屋敷。
猫がたくさん住んでいる。
飼い主の女性は、ぼんやりしがちの女性。
でも猫達は彼女が好きだ。
『あの男に出会ったことは、彼女にとって幸福で不幸だった』
一番古株の黒猫は、そう分析する。
『俺はあの男とすごした短い間の幸福を知っている。だから、待つなとは言えない』
『戻ってくるよな』
白猫がきく。
『絶対戻ってくるよな』
白猫が念を押す。
答えるものはいない。
『戻ってこないと…彼女かわいそうじゃないか…』
白猫はにゃあんと鳴いた。
『あの人はいつだって遠くを見ていた…』
彼女はぼんやりとそう考える。
まだ待っているのだろうか?
いつまで待っているのだろうか?
自分自身に問い掛ける。
過去の優しかった彼に、すがっているのかもしれない。
私だけが特別ではなかったのかもしれない。
特別はもっと別のところにいたのかもしれない。
彼女は思い出す。
斜陽街に迷い込んだ彼のことを。
黒猫を抱いている私の目を見て、
『君は猫のような目をしている…』
そう言ってた。
その眼があまりにも誠実そうだから、
あまりにも奇麗な眼をしていたから、
家に置いていたくなった。
出来るなら閉じ込めたかった。
独占したかった。
それでも彼は旅立っていった。
彼が探していた天使のもとへ。
追う気はない。
『きっと帰ってくる』
そう言ったから。
いつまで待つのだろうか?
自分自身に問い掛ける。
過去の彼のことを忘れてしまえば…
そう考えることもあった。
忘れることなんて出来ない。
大切な彼。
あと少しだけ想わせて…
そして彼女はまた過去に浸る。
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