第38話 教会
斜陽街三番街。
一番街のバーの路地から、右へ行くとがらくた横丁、左に行くと教会がある。
この教会は荒れ果てていて、誰も住んでいるものはいない…らしい。
時折人影があったという噂も流れる。
草はぼうぼう。
取り囲むように木が茂っている。
入り口らしい扉から中に入ると、屋根が所々抜けて、妙に明るい広間がある。
教会らしく真っ正面には十字架が掲げられている。
ボロボロしてはいるが、一応十字架だ。
ある日。
螺子師は散歩がてら教会にやってきた。
そこで人影を見付けた。
「誰だ」
声をかける。
「誰?」
質問に質問で返された。
螺子師はちょっと拍子抜けしたが、
「僕は螺子師だ」
と、真面目に返した。
すると、
「あなたは螺子師、私は誰?」
さらに訳のわからない質問で返された。
「そういえば…」
思い当たる節はあった。
浮浪者かもしれない。
浮浪者は自分である証を失った者。
誰でもない者だ。
「浮浪者か?」
そう聞いてみる。
「そうかもしれない…そうじゃないのかもしれない…」
曖昧に返された。
「祈るんです…罪が早く癒されるように…」
「罪?」
罪の意識があるということは、浮浪者とは違うのかもしれない。
身なりは普通だ。
浮浪者のようにボロボロしていない。
(はて、この人は一体何者なんだろう?)
螺子師は疑問を持った。
「黒い風…吹いた…」
また断片だ。
黒い風…
夜羽あたりだろうか?そんな事を言っていた気がする。
番外地に黒い風が吹いた。
それ以来人形師が膨れた人形を持ってくるようになった。
胸が張り裂けそうなくらい、強い思いの歌が流れているらしい。
黒い風…
それが原因なんだろうか?
「いつか…罪が…黒い風が消えるその日まで…」
女性はそう言うと掻き消えた。
今までそこにいたのが夢のように。
あとには呆然とした螺子師が残った。
螺子師は頭をぶんぶんと振ると、
また散歩の続きをした。
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