第35話 風水師
自称、超級風水師。
シャンジャーはそう名乗っている。
彼は電脳街の風水を正す仕事をしている。
電脳の風水というのも漠然としている。
シャンジャーに言わせれば、「いわゆるバグ取り」らしい。
プログラムには流れがある。
その流れを妨げるようなものを取り除く作業をしている。
シャンジャーはアルコールというグループに属している。
アルコールというグループは、アクセスしている者に癒しや夢、妄想を提供している。
シャンジャーはそっちの方ではあまり指名がない。
ウォッカやジンなどの方がよく呼び出される。
だからシャンジャーは風水の方に専念できる。
「鳥篭街でもいくかな…」
彼が行こうとしているのは、電脳街の一部。
たくさんのサイトが集まっている…集合住宅のようなところである。
彼はいつもはそんなところに行かない。
風水が乱れぎみだからだ。
今回はたまたま、乱れた風水を正してみるかなという気になった、それだけだ。
かかとを鳴らすと、鳥篭街へ飛んだ。
彼の視界には、ちょっと歪んだビルが幾つも目に入った。
「予想より歪んでるなぁ…ほっとくとサーバーダウンするぞ」
彼は手近なところからプログラムを見てまわる。
「これは…ここを…ちょちょいと…」
プログラムを編みなおしたり、
「ここは…邪魔」
と、特製の剣で切り落としたりする。
「む、違法者発見」
彼はあるビルの一室に怪しい薬を売買しているサイトを見付けた。
すぐさま通報。
あとはサイバーポリスがどうにかしてくれる。
シャンジャーが鳥篭街から電脳街の大通りに戻ってくると、
端末にメールが届いていた。
『こんにちは。薬師のリィです…』
「ああ、あの子か…斜陽街の子だったよな」
どんな子なんだろう?
彼は想像する。
斜陽街の者といえば、電脳娘々くらいしか接したことがない。
いずれ逢う機会もあるだろう。
そう思い、彼は返信した。
風水師の仕事は意外と地味だ。
シャンジャーはそれでも、この仕事が嫌いではない。
むしろ、好きだ。
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