第44話 ファンネーム


「あっあ……おっす……天月ダヨぉ~」


 なんていつもみたいにボイスチェンジャーを使いつつ配信を始めるカグレ。

 慣れたようにオープニングを流し、コメント欄を見ながら少し雑談を始める。


 今では合間に飲み物を飲みつつ、キーボードを打ち込むという高等テク(笑)をやる余裕すらある。うん、成長したなぁ……

 しみじみ感じる我が成長に比べ、伸び悩む再生数と登録者なんですけどね…(*´∀`*)


 へへへと、心の中で自虐という名の苦笑を零しつつも、切り替える。

 ──今日の配信は雑談とゲーム配信ということにしているが、メインは雑談というか…………うん。


「今日はネ……“ファンネーム”を決めようジャナいか!!!」


 高らかにそう宣言する。


 ファンネーム……これからの天月カグレチャンネルの配信上での視聴者さんの呼ぶ呼称のことだ。大抵のVTuberは視聴者さんを“視聴者さん”とは呼ばず、視聴者さんと一緒に決めたファンネームで呼ぶ。


 例えば春夏秋冬ひばりちゃんは“ヒバリー組”

 柊カノンちゃんは“超電磁砲電”超電磁砲電レールガンズ

 だったりと、人によって中々に個性が出るようだ。

 それを今日こそ・・決めるのだ。


『え……は?あー、そっかファンネームかぁ』

『おっそーぉぉぉぉ!!!』

『でもまぁ確かにファンネーム(その他諸々)決めてなかったねw』

『今更すぎる気もするけどね…』


 普通こういう物は自分のVTuberのイメージを擦り合わせるために使われるタネのようなもの。つまり初配信や2回目の序盤の配信で決めることが当たり前であった。


 そういう意外に大事なものを……カグレはすっかりすっぽかし、デビュー3ヶ月ここまで来ていた。


「…………一応言葉を付け足しておくんですけど。別にすっぽかしてた訳じゃないんです。いつも頭の片隅にファンネーム決めてないよね……とは思ってたんですよ……だけど……へへ。まぁ色々とあった訳じゃないですか……ね?」


『あ……』

『初回配信の放送事故に……煽り行為……』

『⬆声バレも追加やね』

『まぁ。そういうことならしゃーなし』

『確かに違和感はあったかもね』


「ま、そういうことで今からやるんでヨロです」


 視聴者さんたちの了承を得たことを確認した後、早速企画を進める。


 ☆☆☆


「取りアエズ………候補は何個か考エて来タゾ」


 そう言い、YouTubeの投票モードを起動する。

 この機能はよくひばりちゃんが多用しているのを見て覚えた機能でコメント欄から投票出来る簡易的な投票箱で、簡単に視聴者さんと物事を決められたりする便利な機能と言えた。


 カタカタカタ……


 そうして同時に候補案を掲示する。


 ~~~


 ・堕天ドモ


 ・月のツドい


 ・カレハども


 ・(視聴者さん)


 ~~~


「あ!最後ノ(視聴者さん)っテいう選択肢はナ、えーっと…………はい。第4の選択肢ト言ウカ…………ハイ。気に入らないと思うのならそこに投票して下さい。決して今の呼び方が無難に定着しつつあるからそれでもイイんじゃない?と思っテる訳デモないですし、変な意味も無イので!!」


 一応の保険を掛けつつも、ファンネーム自体は前々から候補は考えていた。なんせVTuberオタクな時雨。もしも自分がVTuberになった時のファンネームなんて決めてるに決まってるだろう。


「フフフ、ドヤぁぁ、イイファンネームばっかりでしょう」


 ここぞとばかりにボイスチェンジャーをオフにしたが………



『『『『『──じゃあ………(視聴者さん)で』』』』』


「え?は?」


 投票結果は謎の引力が働いのかは分からない。ただただカグレにとっては予想外の結果であった。


「な、なんで?ですか?気に入らなかったんですか?」


 信じられないという感情でいっぱいいっぱいになりつつ。


『いやー、だってね…』

『なんだかんだ考えて、今更呼び方変わっても違和感だし、ファンネームはいらないんじゃないかな?』

『⬆そうだね。その通りかも』



『それにね……ファンネーム自体もちょっと……』


「お、おい!( ・ὢ・)」


 という事らしい。



 ──今日の配信の結果。

 ファンネーム不評すぎて決定せず。

そして今のままの“視聴者さん”のままになったのであった。




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煽り系配信者のワイ、成敗されて美少女バレする かえるの歌🐸 @kaerunouta

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