第43話 これでいいんだ...


“煽り”はしないと宣言した…あの配信から2週間が経った。あれから特段変わりはないって感じ…だね。


 普通のクソみたいな自堕落な落ちぶれた生活に普通の何にも無い煽りの無い配信。そして誰とも話さないボッチな学園生活。淡々と生き、淡々とタスクをこなす毎日。


 それでも、なるべく視聴者さんに不快感を感じさせないように意識しつつ、言葉を一つ一つ選びながら配信をやっていた。更に配信頻度も週1から週3に上げ、天月カグレチャンネルを心機一転に盛り上げようとしていた。


 煽り系→清楚系。それを何処と無く目指していた。

いや、目指さないと行けない状況になっていた。


 ──はっきり言って大変である。

 いつもの脳のリソースを別に割くと言えば適切なのだろうか……単純に疲労の蓄積度は半端では無い。


 配信内容自体は相変わらずのスマファミ配信なのだが…………何故だろう、不調が続き天月 カグレのガチナイトの日本ランキングは大きく後退……30位前半を行き来していた筈が……いつの間にか100位以下になるという暴挙を果たしていた。


 それに対しての悔しさは感じるが……なんだろう……死ぬほど悔しくはなかった。負けて負けて負けて…………それでも勝利を追い求めた中学時代とは気持ちの持ちようが明らかに変わっていたのだ。ただただ無感情に、何の面白さも分からずに……心が少しずつ欠けていく。



 それでも。視聴者さん達は多いに満足してくれている。同接見てくれる人は前と比べるとかなり減ったけど、悪口やダメ出しを書き込まれる訳では無く、ただただ応援のコメントで溢れている。

 時折ボイスチェンジャーをオフにするのがいい味を出しているみたいだ。味をしめる訳では無いが需要と供給のバランスは考える必要があるみたいだ。


「でも……これが………本当に私のやりたい事だったのかな…」


 なんて良くないことも考えるけど………その感情は時雨の心にそっと仕舞う。これでいいんだ。これが一番求められているん筈だから。

 だから。それで………いいんだ……


 ☆☆☆


「──ねぇ、マネちゃん」


 discordにより、自分のマネージャーに連絡を送る。


 シンプルな黒統一の配信部屋にポツンと地べたに座る1人の少女?。彼女は棒付きキャンディを咥えながら慣れた手つきでキーボードを弾く。


「どーしても、コラボしたい相手がいるんだけどさ、連絡先知らないからマネージャー間で取り合って貰えない?」


 それはマネちゃんに向けてのコラボ要請であった。


「あら?珍しいわね。貴方ほどの人望の広さなら連絡先を知らないなんて一体どんなコラボ相手をご所望なのかしら?」


 すぐに返信があり、物珍しそうにマネちゃんは笑う。


「えーっとね、この子……“天月 カグレ”ちゃん」


 そう言い、最近撮ったスクリーンショットを載せる。

 勿論、お気に入りの“声出し直後の天月 カグレ 中の人の表情が完全に反映された絶望顔”の時のやつだ。


「え?本当に?あの天月 カグレだよ!?炎上が尽きないちょっとおかしな子なんだよ!?」


 マネージャーは意外すぎるコラボ相手に驚きを隠せないようだ。

 まぁ、それはそうだよね。当たり前の反応だよね…


「貴方のブライディング的に大丈夫だとは思うけど、それでも本当にいいの?マイナスになる可能性も十分にあるんだよ!?」


「うんうん、大丈夫だと思うよ。それに一応先輩としてあの子には駆け上がって欲しいもん」


 前回の……あの時の試合はかなり盛り上がれた。時間にすると僅か数分の戦いだったけれども、手に汗握る戦いだった。その試合がどうしても忘れられないのだ。


「まぁ、そういうのなら天月 カグレのマネージャーに取り合ってみるけど………」

「さっすがぁ!マネちゃん。頼りになるぅ。助かりますぅ。ありがとぅ!」


 無邪気に、純粋に喜ぶ。


「はいはい。了解。じゃ、OKだったら連絡するから企画とか説明とか諸々考えておく事ね」


「それはもう決まってるから大丈夫。こう見えて企画発案は得意なんで。それにやる事は1つしかないし……」


「あらそう。ならいいけど、」


 そう言ってマネちゃんとの連絡を一旦終える。










「ふぅ………前回は“スナイプ”だったから一切話してないし、今度はちゃんと話して仲良くなろうね……カグレちゃん」


 彼女の名前は“新羅 ムニ”。Zweiの中でも選りすぐりのトップVTuberだ。そして天月カグレにとっては声バレ罰ゲームの原因になった人物であり、時雨にとっての最大の推しであった。


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