第41話 再出発の姿


 休日に入り、土曜日はぼーっと休養に使った。

 ただただゲームをしたり、別の配信を眺めたり……本当にいつもの。高校に入る前の趣味ルーティンを久しぶりにやっていた。


 気分は高揚、テンションはMAX。本当に楽しかった。久しぶりに自分の時間を満喫できた気がした。


 ──そうして日曜日。一応、配信の枠は建てておいた。「配信をしてもしなくても暫くは大丈夫です」とマネージャーの佐々木さんに言われてはいたけれど、先延ばしにすればするほど配信がしにくくなるのは分かっているので、やる事にしていた。


 気持ち的には大分“普通”。平常心でいられている。

 確かにまだ成敗された時の恐怖心はある。負けるなんて今後絶対に嫌だし、罰ゲームとかも絶対にやりたくない。だけど、気分的には心機一転リニューアルオープンしたと切り替えてやっていくつもりだ。


「ふぅ、頑張らなきゃ」


 パソコンの電源を入れ、いつもの準備を始めた。


 ☆☆☆


 配信の時間。準備は万端。

 視聴者さん達はありがたいことに大勢集まっている。

 事前にTwitterとかで告知はして無かったはずなんだけどな…うん、すごく嬉しい。(*´ ˘ `*)


「ふぅ………いくよ。天月 カグレ…力を貸して……」


 覚悟を決め、カチリと配信をスタートする。




「ヨォ~す。天月ダヨー」


 配信を始め、声を出す。

 いつもの気だるげな挨拶をかます。


 今日やるのは〖雑談配信〗。それは天月 カグレとしては珍しい配信だった。基本、天月カグレ=ゲーム配信をしていた。単純に雑談が得意じゃないコミュ障というのが多いなる理由だったけれども。


『は?なんで、ボイスチェンジャー使ってんだ?』

『⬆それな、可愛い生声聞かせてくれやー』

『なんでまた使いだしたの?罰ゲームはもう色んな意味で終わったんだよ?』

『ガシャガシャ過ぎて耳死にました。至急カワボを我に欲す…』

『⬆激しく同意の民いてワロタw』




「イヤー、まァ。うん。そーですヨネ………」


 コメント欄をようやく見ると………疑問で溢れていた。まぁ、それはそうで…………当たり前だよね……


 ボイスチェンジャーは勿論オンにしていた。あくまでも声出しは負けた時のみ有効。だからいつも通りボイスチェンジャーを使った訳だけど……


 不評なのは相変わらずのようだ。

 やっぱりダメなんだね。自分の中ではもう普通過ぎて逆に気にもならなかったんだけどね…


「デモ、まぁ。ゴメンなさイ。ナンカ、色々と……だから、マァ。うん。」


 そう言って……ボイスチェンジャーのボタンに手を掛ける。佐々木さんに教えてもらい、ボイスチェンジャーの切り替えをボタン操作1つで変えれるように設定してもらったのだ。


 ──今このボタンを押せば、ボイスチェンジャーがオフになり自分の生声が配信に乗る。罰ゲームとかでは無くただただ普通に…………さらけ出す事になる。


「……………っ………………………はぁ」


 でも……………天月カグレも、雅坂 時雨も変わらなきゃ行けない時なんだ。

 もう間違えない。ぐちゃぐちゃになっているこの配信状況VTuberライフを新しく一から始めるんだ!


 カチリ…


 震える手元。揺れる瞳孔。激しく波打つ心臓。ゾワゾワと寒気が時雨を襲う。

 今、声を出せば………くっっ。様々な感情が流れる。だけど自分で、自分自身で決めた事なんだ。




「──この度は………お集まり頂き…ありがとうござい…ますっ。えーっと、えと。まぁ色々とこれまで、すみま…せんでした。

 これはホントのホントの…生声です。ボイスチェンジャーはこれからも使用していく予定ですが、こ、これだけは謝っておきたくて………っ。失礼、します……」


 取り敢えず、言えるだけは言っておいた。震える声だったと思うけど……後は行動で示すのみだ。



「ン?どうカした?」


 ボイスチェンジャーを再びオンにし、コメント欄を見ると…


『生声キチャァァァァァ!!!!!』

『やっぱり、いい声やなぁ!』

『うん。可愛い可愛い、最高ボイスぅ!』

『待ってましたァァァ!!!』

『復活しました。カワボサイコーです』


 時雨が思っていたほど、時雨の生声は反響が良いみたいだ。こんなボソボソなゴミみたいな声だと思ってたのにね。(´▽`)


「取リ敢えズ、ソウイウコトだから。」


 言いたいことは大体終わり。さて、どうしようかと迷っていると……


『じゃー、色々質問したいな~』


 と、コメントを見つけたので急遽質問コーナーをやることにした。




『謎の配信者 天月 カグレのあれやこれらを本人から知れるのか!?激アツ!』

『そ、それな。切り抜き師達頑張れ、拡散頼むでぇー』

『今から質問沢山考えなきゃね!』


「あ、イットくけど。答えられるコとは少ないカラネ!」っと最低限の前置きをし、質問コーナーをスタートした。



 質問1『まず、カグレってなんでボイスチェンジャー使ってるの?』

「エト、それは単純に身バレ防止カナ~色々とヤッテおいた方ガ良いって聞いたからネ」



 質問2『じゃあ、なんでそんなガチャガチャの声になっちゃったの?』

「あー、それは………ハイ。普通にミスりました。スミマセン(_ _)変エるタイミングも失っテしまイマして…アはは……」



 質問3『なんでそんなにゲーム上手いの?まぁ、スマファミしか腕前は知らんけど…』

「エトエト、中学……ゴホン。えと……幼い頃カラ、コレしかやって無かったから…………カナ。即死コンボイイよネ」



 質問4『え?じゃ………………ボッチなんすか?』

「イイエ。チガイマス。決してボッチとか、そーいうノジャ無いデす!単純に周リに人が居なかっただけだモん!!!!」





 質問5『じゃ……ぶっちゃけ。なんで煽り系になっちゃったの?』


 あ…………やっぱり、この質問は来るよね…………


「っ…………ソウですよね…………………」


 ここで、再びボイスチェンジャーをオフにする。


「えっと、この件に関しては、しょ、詳細に説明させて貰いますね…………きっかけは、コラボ企画の柊カノンさんとスマファミ対戦をした時です。あの時は色々とこんがらがってたんですけど…………正直、余裕のある対戦でした。だからなんですかね…………ある感情を抱いてしまったんです。


 ──プレイで圧倒し、罵倒で相手を煽ることの爽快さに……


 本当に、ダメだって分かってたんですけど………やめられなくなってしまったんです。これからは…そんなこと無いようにしますっ。本当にすみませんでした」


 震える涙まじりの声。だがそれは天月 カグレにとっての答え。“煽り系としての撤退”だった。





 この配信はカグレにとって、過去最高の高評価を貰う配信となった。それはつまり新たな天月 カグレとしての再出発の姿を証明した結果となる。












 好きな事をやって気持ち良くなるのはもう今日で終わりなんだ……それが視聴者さんが望む姿なんだ……


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