第16話 柊白雪の憂鬱〜白雪side〜

私はお父様の敷いたレールの上を歩いて生きている。

私の家は柊グループという大会社で主に旅行関係の仕事を一手に引き受けている会社だ。

年に数回しか会わない父からは将来は父が決めた相手と結婚しその人に会社を継がせると言われてきた。

父からは将来結婚する相手の為にスタイルの維持、自分磨き、花嫁修行を命じられてきた。

好きでもない男と結婚して子供を産む。私に自由などない。生きているのも憂鬱な日々だった。

そんな日々を送っていた中学三年生になったある日父に呼ばれ私の今後の人生を左右することを言われた。


私は父に呼ばれ書斎の扉を叩く。

「お父様。白雪です。入っても宜しいでしょうか。」


「入りなさい。」


「失礼します。」


柊孝之。いつも顔に深い皺を作りにこりともしない。いつも厳しい目を向けてくる人だ。

久々に見た父の顔はいつもの深い皴のある顔ではなく見たことのない優しい表情をしていて驚いてしまいました。


「今日呼んだのは今後の事に関してだ。」


私は嫌な予感がしました。私の婚約者が決まったという連絡かと思いました。


「お前には高校から清涼高校に通ってもらう。お前にはそこに通う白銀グループの一人息子である白銀颯と極めて友好的な関係を築いてもらいたい。恋人である必要はない。ただ会社同士でやり取りできる程度の関係は構築してもらいたい。成功した暁にはお前は好きな人生を歩んでいい。」


衝撃でした。もしこれに成功できれば私は私のしたいことを出来るのです。

憂鬱だった人生に一筋の光が差した気がしました。

白銀颯くんとお友達になって父様に紹介できれば好きな人を探す事もできる。

彼の噂はよく聞いている。悪い人ではない。寧ろいい人だ。

話した事はないけれど、パーティーですれ違ったことがある。

その時も転びそうになった令嬢をさらっと助けていた。

彼は中学生にして完成されていた。

だから私自身も少なくとも友人にはなりたいと思っている。


「これが成功したら会社の跡継ぎは社員から選ぶから好きな男と好きな人生を歩みなさい。一番いいのはお前が白銀颯と恋仲になることだが彼は女嫌いと聞く。無理に踏み込まないようにしなさい。」


「わかりました。必ずご期待に沿えるようにします。」


私は父の部屋から出て来年からの高校生活に関して思いを巡らせるのでした。



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