8月|観たもの、読んだもの


リハビリとして雑感を書くのを再開してゆく。あくまで簡単に感想を書くものなので、読みものとしては△かもしれない。そこだけ申し訳ないが、ぼんやり続けられる程度でゆきたいので、お許しを。


つげ義春コレクション① ねじ式/夜が掴む

https://amzn.asia/d/2wgIvdz


ネジ式、ゲンセンカン主人についてはどういうものかをある程度知っていたが、ちゃんと読めたのは今回がはじめて。2作の読み味はそれぞれすきで、やはりというかそのどちらにも寺山修司氏の映画にみた景色の原点を感じた。ドッペルゲンガー的な話なのもあり、わたしとしてはゲンセンカン主人がソリッドな奇妙話でよいと感じた。ネジ式はひたすら絵(絵、つまりは絵になっているシーン。切り取りそのもの)がすきで、場面場面に物事がそこにあるのを眺めさせていただいている感覚がよかった。夢日記的事物として描かれているから当然なのだが、ありのままをおいてゆくとこうなる、がきちんとある。ものを絵にする、のひとつの到達点としてこれがあるのだろうと感じた(雑感すぎて申し訳なくなってくるが)


他作品で個人的にすきなのは「必殺するめ固め」「懐かしいひと」「日々の戯れ」。必殺するめ固めはひたすらシュールで、元プロレスラーだから仕方ない、ですべての道理がすんでしまう(すんでいるわけではない)のが説明とかそういう事柄でなく、とてもいい。不意の遭遇とどうしようもなさはこういうものだと考える。「懐かしいひと」は古典文学の私小説的な雰囲気が漂っているのがとてもすき。「日々の戯れ」は終わり方がとにかくすきで、競輪場のお金をわたすときのくだりと、包帯でわかるようになっている挙句の握手と、そのあとの奥さんと彼の会話の雰囲気になんとも、しみじみした。


ちなみにこの巻でぼくがいちばんシュールだと思ったのは「雨の中の欲情」の、平泳ぎを奥さんにさせるまま行為を継続するシーン。奥さんの服を散々脱がせた挙句にナイロンは電気が………などと云って、襲いかかって、なんだかんだで行為があった挙句に更に、で畳みかける行為シーンの会話がこうなのだが、「奥さん泳ぎはできますか」「得意です」から行為に及び「このまま平泳ぎで(致しましょう)」となる事柄のなんともまあ、肉体目的があるゆえの確認、のみが行われていることのおもしろさが癖になる。同時になんなんだともなる。それでよく、この、変なところを気にしつつ行為にかかる感じが、生っぽくてすきだった。はたからみると行為時の会話は、こんな感じでシュールになる事象が発生しているのだろうとは思う。どういう距離で描くのかが、こういう会話を起こすことのむずかしいところと思うため、触れられてよかったと感じる。


「夜が摑む」はラストのコマがすきで、これを冷たく撮ると黒沢清さんのホラー映画(90年代)絵作りになってよいのだろうなと思った。残穢などがこうかもしれない。こういう感覚がよぎることは自分もあり、それがよいのだと感じる。窓の手はどこか夢野久作氏の「死後の恋」めいた気配を感じ、よかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る