第7話 どーぶつがワーワーに思う
午前七時。
例によって眠れぬ夜を過ごし、ことあるごとにスマホに流れるニュースを更新していた。
ちゃぶ台の上に置かれた画面に【速報】として扱われている。
【今年のワーワーはうし氏と、たかあしがに氏に決定】
黄色い封筒が届いてから、今日を待っていた。
楽しみにしていた……なんてことは無い。
ただ誰に話す訳でもなく、淡々とそして悶々とした日々。
そこには何か後ろめたさを感じていた。
ワーワーへの参加が確定したという現実と共に、一つ胸のつかえが取れた気がする。
(たかあしがに氏)
初めて聞く名であった。
図書館の司書をしている(わたりがに氏)は知り合いでは無いものの、認知をしている。
あのタイプの人か。
頭の片隅で、昨日まではうすらぼんやりしたシルエットが少し定まった。
今年の三十一日の夜、舞台に立つ二人。
一人は自分、もう一人は……
皆笑ってくれるのだろうか。
その前にきちんとした芝居が出来るのであろうか。
いやいや、まずはたかあしがに氏と仲良く出来るのであろうか。
ふっ。
鼻から笑いが息として放たれる。
私はワクワクしているのか?
ウソだろ。
命が懸かってんだろう。
しかしあながち全否定も出来ず。
複雑な思いがグラフとなった場合、ほんの数パーセントだが確実に存在する思い。
(あの舞台に立ってみたい)
立ったとて、結末は変わらない。
しかし立たなければ、確実なる終焉が待つ。
この人生の締めくくりにはふさわしいか。
四十年以上生きてきた中で、特別なことは何一つ無かった。
山も谷も無く、平坦な道をただ生きてきた。
最後に大きな崖っぷちに立たされた。
落ちておしまい。
しかし崖であるならば、眼前にはもう一つ景色があるはず。
想像の中で雲一つ無い、青々とした空が広がっている。
そこに向かって羽ばたくのだ。
私にとって、ワーワーはそんな舞台になりそうだ。
「さてと」
ニュースを見た皆がどう思うであろう。
出会う人出会う人、声を掛けられたらなんて返せば良いんだろう。
そんなことを考えながら、仕事へ向かう。
今日も変わらないコンビニの仕事へ。
どーぶつ×ワーワー 二北良秀 @hutakita
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