6月といえば? (いすずの場合)

 

 6月といえば、一体何を思い浮かべるだろうか?

 もし俺が6月といえば何? と聞かれたら、間違いなく……。


「梅雨だろ」

「は?」

「雨ばかりで嫌になっちゃうね」

「……」

「いたっ!? なぜ無言で叩く!?」


 何故か不機嫌な顔をしながら、ペシっと俺の頭を叩いてくるいすず。

 6月といえばそれしか浮かばなくないか?


 ジトーっといすずを睨みつけると、いすずはフンっと鼻を鳴らした。


「いや、6月といえばジューンブライドでしょ」

「は?」

「だから、ジューンブライドだってば!」


 ジューンブライド……ってたしか6月に結婚すると幸せになれるってやつだっけ?


 いすずはそれはもう乙女の顔をしながら、両手を握りしめ、キラキラした瞳で俺を見つめてくる。


「私、結婚するなら6月がいいな〜」


 いすずが真っ白いウェディングドレスを着た姿を想像する。


「(大切な妹が結婚か〜)」


 かなり、寂しかった。


「……そっか。いすずが嫁に行くのは寂しいけど、その時は盛大に祝ってやるよ」

「……」

「いたっ!? 無言で頭ぐりぐりやめて!?」


 その後も何故か機嫌の悪い、いすずだった。


(お兄ちゃんのアホっ!)

(いたたたっ! いたいって!?)





おしまい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る