寒い時はくっつけ!

 最近の夏はジリジリと暑く、9月になってもその気温は変わらなかった。

 このまま暑い夏が続き、冬が無くなるんじゃ? 

 そう思っていたけど、10月に入ると気温は下がり、いつの間にか朝は肌寒くなっていた。


「さむっ」


 俺は腕をさすりながらリビングに向かう。理由は、朝ごはんを作るためだ。

 

「(今日は何作ろうかな)」


 なんて思いながら扉を開けると、リビングにはいすずがいた。いすずはソファーの上で体育座りをしながら震えていた。


「いすず、おはよう」

「あっお兄ちゃんおはよう。今日は寒いね」

「震えてるけど、大丈夫か?」

「大丈夫、じゃないかな。寒いの苦手なんだよね」


 俺は不思議に思って、首を傾げた。


「けどいすず、この間テレビでキンキンに冷えた部屋でかき氷食べる食リポしてなかったか?」

「あはは、なんとかプロ根性で乗り切ったよ。すごくきつかったけどね」


 その時のことを思い出したのだろう。いすずの顔は真っ青になった。


「……早くコタツ出したいな」

「さすがにコタツ出すには早すぎだぞ」

「うぅ、あったまりたいのに……あっそうだ!」


 いすずは勢いよく顔を上げると、俺を手まねきして呼んできた。


「お兄ちゃん、ちょっと来てくれない?」

「なんで?」

「いいから! とにかく隣に座って!」


 いすずに言われるまま、俺はいすずの隣に座った。


「(一体なんなんだ?)」


 不思議に思っていると、いすずがいきなりくっついてきた。


「い、いすず!?」

「えへへ、ぬくい」


 いすずは俺の体にスリスリとすり寄ってくる。いすずの甘い香りと、柔らかな体の感触を感じる。俺は意識しないように、天井を見上げた。


「はぁ〜お兄ちゃんにくっつけば寒さをしのげるなんて、最高」

「あのなー」

「これから、毎日よろしくねー」

「でも」

「ふふん♪」


 いすずはそれはもう、幸せそうな顔をしていた。その顔を見たら、何も言えなかった。


「(まっ、たまにはいっか)」


 いすずがすり寄ってきてくれたおかげか、俺は肌寒さを感じなかったのだった。


「(なんだか、熱くなってきたけどな)」



 一方いすずの心中はというと?


「(うわぁぁ、ノリでお兄ちゃんにくっついちゃったよ!? すごく恥ずかしいんだけど!!??)」


 あまりの恥ずかしさに、いすずの体はポカポカしていたとか。





おしまい

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