第17話 ワイワイした後に


 2人にこってりとしばられた俺。

 精神的にズタボロである。


「うぅ」


 なんてやつらだ。結束すると強すぎるんだけど!?

 俺が泣いていると、青がはぁーっとため息を吐いた。

 

「まぁ、反省しているみたいだし許してやるか」

「あっ青〜」

「ダメですよ、青ちゃん! 甘やかしたら、またやりますよ」


 いすずは、かなり手厳しかった。しかし、青がそんないすずを宥めてくれた。


「まぁまぁ、今回は多めにみてやろう。さすがにそろそろ始めないと、ホットケーキパーティの時間が押しちゃうしな」


 いすずは、チラッと机の上を見た。そこには、ホットプレートなどが置かれている。

 ホットケーキパーティをすることを、思い出したようだ。


「むむっしょうがないですね。今日のところは許してあげますよ」

「いすずー!」

「これからは、妹以外見ちゃいけませんからね!」

「はーい!」

「いや、妹もダメじゃないか!?」


 ということで、ようやくホットケーキパーティをすることになった。(ちなみにいすずには、服を着替えてもらった。危ないからな)


 コップにジュースを注いで、準備完了。


「それじゃあ、お疲れ様!」

「「お疲れ様!!」」


 互いのコップをぶつけ合う。


 なんかいいよな、こういうの!


「じゃあ、焼いていくな!」

「了解!」


 雑談をしながらホットプレートに生地を流し込み、ホットケーキを焼いていく。とても美味しそうなホットケーキが焼けた。


 まぁ途中いすずが「これだけだと、栄養が足りないのでは?」とか言い出して、プロテインかけようとしたのはビビったけど。


「ほら、お皿に入れるぞ!」

「サンキュー、青!」


 青に焼きたてのホットケーキを皿に入れてもらった。ホットケーキの上にバターをのせ、上からハチミツをかけていく。

 ナイフでホットケーキを切り、フォークで口に入れると、バターとハチミツが合わさって、とても美味しい。ハムハムと俺は一心不乱にホットケーキを食べた。


「あはは、相変わらず弘人は甘党だな」

「すごい、もう3枚も食べてるじゃないですか!?」

「甘いものは、別腹だからな」

「あっ弘人、口の横にハチミツついているぞ」

「!」


 どうやらまた口の横についてしまったらしい。

自分で取ろうとしたが、上手くとれてないらしい。


「もぅ、しょうがないな」


 さっきと同じように、青が手を伸ばしてくる。

「サンキュー」とお礼を言おうとした……


「お兄ちゃん、私が拭いてあげます」

「いっ!?」


 が、別の手が横から割り込んできた。いすずだ。

 いすずは近くにあったティッシュで、ゴシゴシと強く拭いてくる。強く拭いているせいで、ティッシュがボロボロになっていた。


「痛い、痛い! もう、いいから! ありがとういすず」

「まだ、残ってますよ?」


 目が、目が笑ってないよ? いすずさん。


「ほらほら、拭いてあげますよ?」

「痛い! 痛いって!?」

「優しいないすずちゃん〜」

「どこが!? めっちゃ強くやってきてるんだけど!?」

「ふふ、ふふふふ」


 結局、いすずに強く拭かれ続け、口の横が赤くなってしまった。


 ヒリヒリするんだけど!?


「お兄ちゃん、口の横赤くなってるよ? 大丈夫?」

「誰のせいだと思ってるんだよ!? 誰のせいだと!!」

「こら、弘人。拭いてくれたいすずちゃんに対して、なんて態度をとってるんだ!」

「ふふ」

「……俺の味方は、いないのかよ」

「いすずちゃんの香水いい匂いがするよな」

「って無視かよ!?」

「私、香水使ってないですよ。多分、アロマの匂いかと」

「へー、そうなのか! どこのアロマ使ってるんだ?」

「駅前の端にある」

「あぁ、あそこのアロマを使ってるのか!」


 俺を放置して、2人は楽しそうに喋っていた。

 仲良く喋る2人を見ながら、俺はもう一切れホットケーキを食べた。


「なんだよ、弘人。ジッとこっちを見て」

「いや、2人ともかなり仲良くなったなって思って」

「くっくっく、あたしたちは、仲良しだ! よくメールするしな。羨ましいだろ、弘人?」

「別に羨ましくないんだけど!?」

「ふふ、お兄ちゃん羨ましいくせに」

「だから、羨ましくないって!?」


 それから1時間、3人でわちゃわちゃ話し、ホットケーキパーティ+お疲れ様会は幕を閉じた。


「さて、片付けま……」

「弘人、しぃー!」

「どうかしたのか?」

「いすずちゃん、疲れて眠っちゃってるよ」

「あらら」


 いすずは疲れたのか、ソファーにもたれかかって眠っていた。とても気持ちよさそうな顔をしている。


「仕事が忙しくて最近帰れてなかったからな。疲れちゃったんだろう」

「そっか、なら寝かしてあげた方がいいか」

「いや、いいよ。俺が部屋に連れて行く」


 俺はいすずをお姫様だっこする。この間やったばかりだから、慣れたもんだ。


「いすず部屋に寝かせてくるから」

「了解! 先にお皿洗っておくな」

「あぁ、頼んだ」


 俺はいすずをお姫様抱っこしたままリビングを出て、2階へと行く。

 ベットにおろし、さて部屋を出ようかなっと思ったとき、


「お兄ちゃん」

「いすず?」


 いすずがゆっくりと目を覚ました。


「あれ、なんで私ベットの上に?」

「いすず、話してる途中で眠っちゃったんだよ」

「あ、ごめん。片付け……」


 慌てて起きようとしたいすずをベットに戻す。


「いいよ、気にしなくて。疲れてるんだろ? 俺たちでやっておくから眠ってろ」

「ん」


 いすずの頭を撫でる。


「じゃ、俺はいくから」


 いすずの頭を撫でるのをやめ、下に行こうとするとクイッと裾を引かれた。


「待って、お兄ちゃん」

「? どうしたんだ、いすず?」

「もっと頭を撫でて、欲しいです」


 いすずは顔を赤ながら、上目遣いでお願いしてきた。


 なんか、かわいいな。


 いつも生意気な態度をとるいすずが素直にお願いするものだから、調子が狂ってしまう。


「わ、わかった」

「ふふ」


 いすずの頭を撫でてやると、いすずは気持ちよさそうに目を閉じた。


「お兄ちゃんの手は、あったかくて気持ちいいね」

「左様ですか」

「なんだか、あったかくて……ふぁーねむく」


 いすずは目を閉じ、そのまま眠ってしまう。よほど疲れていたんだろう。

 スヤスヤ眠るいすずの顔は、とても気持ちよさそうだった。


「おやすみ、いすず」



 いすずの部屋を後にした俺は、リビングに向かう。リビングに向かうと、青がスマホを見ていた。

 どうやら片付け終わっていたみたいだ。


「青」

「あっ弘人おかえりー!」

「ただいま。悪い、1人で片付けさせちゃって」

「気にしなくていいぞ。今日は2人に楽しんで欲しかったからな」

「うぅ、青。お前優しいな」

「へへん」


 ニカっと青は笑う。

 青の優しさにふれ、俺は青が幼馴染でよかったなって思った。


「なぁ、弘人」


 ふと青の顔が暗くなる。


「ん?」

「沢田とのこと聞いたよ、ごめん。あたしのせいで」

「気にしなくていいって」

「で、でも、あたし気が付かなくて!」

「青」

「わっ!? ひ、弘人?!」


 俺は青の頭をわしゃわしゃと撫でた。青は突然のことで、驚いたように目を開いている。


「終わったことだ、気にしなくていいんだ。それに青はなんも悪くないだろ?」

「けど」

「そんなに気になるなら、今度学校近くのパフェ奢ってもらおうかな」

「で、でも、そんなんじゃ」

「じゃあ、追加でチーズケーキもつけよっと」

「……バカ」

「はいはい、バカですよ」

「……今度空いてる予定教えろよな」

「了解!」


 互いに顔を合わせて、笑い合う。


「けど、今度なんかあった時はちゃんと言って欲しいな」

「わかった、今度は言うよ」

「約束だぞ?」


 俺たちは小指を絡ませると、指切りをした。


「これからも、よろしくな青」

「こっちこそ、よろしく」


 

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