秋 その一

  日が暮れる。

 東向きに走っているから夕陽は見れないが。

 先に話をした国道百九十何号をとことこと走る。

 山崩れで先に進めなかった険道も過ぎ、とことこと。

 秋になり涼しくなってきて、紅葉も見かけるようになってきた。

 徐々に暗くなってゆく。それにともない家屋も少なくなってゆき、ぽつぽつと点在するようになる。

 川沿いの道で。反対側は山になっている。川へと流れる沢や滝が山から流れ、道路下の水路を経て川へと水を落としてゆく。ひとつ、トンネルの出入り口の上に水路があるユニークな様式のもある。

 トンネルも多く抜けた。

 とかするうちに、夜の帳は落ち、もう完全に暗くなった。秋も深まり明るい時間も短くなった。

 この道は主要国道とはいえ、郊外に出れば生活の灯かりがごく少なくなり。家屋の灯かりが蛍の光のように細々と灯っている。

 ある日の夜、オレはいつもの通り気まぐれにドライブ。

 自分のとこの県がもうすぐ終わる、というところで、上り坂になる。ミライースはSレンジで曲がりくねった上り坂をとことこと上る。

「お?」

 ヘッドライトは道端で何かを照らした。犬っぽいようだが。

「キツネか」

 とがった口でふさふさの尾のキツネが一瞬ヘッドライトに入り込んで。すぐに逃げられた。

 タヌキが多い土地柄ながら、キツネも少数ながらいる、

 しばらく走れば、県境をまたぐ長いトンネル四本峠の四本足トンネル。むかしここの峠越えは険しく、四つん這いになって越えなきゃいけなかった、とかいう話をちらっと聞いたことはあった。

 トンネルに入る。フラットなのでDレンジにもどす。しばらく走れば、県境を示す表示があり、そこに交通安全祈願のためのお地蔵さんもあった。

「気を付けます」

 とお地蔵さんに会釈する気持ちでトンネルを通りすぎてゆく。

 抜ければ下り坂。Sレンジにしてとことこと、曲がりくねった下り坂を下る。

 もう真っ暗で、周囲の景色は見えない。何もかも夜の闇に溶け込んでいた。それがヘッドライトの光りで闇から掬い出されるように照らされる。

 明るい時間なら、のどかな景色を眺められるし、雨の日なら霧にけぶる水墨画的な趣のある景色を眺められる。

 下り坂が終わり集落があり。Dレンジにもどす。

 この集落の中には最近開店したコンビニがあった。そこに立ち寄る。24時間ではなく地域の暮らしに合わせた営業時間だが。丁度の場所にあり、フードコートもあり、ドライブの際には重宝している。

 晩飯だ。

 そのコンビニでお弁当を買い求めて、フードコートで食べて。

「またお願いします」

「ごちそうさまでした」

 と、店員さんに会釈して再び走り出す。

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