第02話 逆葬儀屋 1
「フーくん、次で降りるよ」
少女はネックゲイターのファスナーを上げ、口元を隠すようにしてから
「その呼び方のときは『くん』付けじゃなくていいんじゃねえか? 俺もユーって呼んでるんだし」
ライトグレーのターバンで巻かれ、寸胴なタケノコのようになった髪型の少女。その穂先——艶やかな黒髪の先端を見下ろしながら、
「フーくんがわたしを呼び捨てなのは普段からでしょう? ……それより」
と、ユーと呼ばれた少女は、吊革から手を放し、
「あ、わりぃ」
「珍しいよね。疲れてる?」
心配そうな声色だったが、眉まで覆うスキーゴーグルのせいで、表情は見て取れない。
「いんや。たまたまぼっとしてただけだ」
「そう。あんまり無理しないでね」
電車はトンネルに入り、吊革に掴まった二人の姿が扉のガラスに反射して映る。ユーと同じく
トンネルを抜け景色が明けると、新緑が高速で通り過ぎて行った。ほどなくして緩やかに減速が始まり、停車。二人は吊革から手を放して、咽返るほど麗らかな日差しのもとへ降り立った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます