オーバーデッドと逆葬儀
詩一
第01話 過死状態(オーバーデッド)
彼女は死を過ぎていた。
まだ日も暮れていないというのに、厚い雲が覆いかぶさるようにしてあるものだから、街は灰色の暗さに包まれていた。そんな雨で煙るアスファルトを裸足で歩いていく少女。その足元にはこぶしだいの青色のガラス玉が、転がるわけでも浮遊するわけでもなく、ただ在った。少女の歩みと共に地面を擦るも、割れることも欠けることもない。白いワンピースからどれだけ雨水が滴ろうとも、それが汚れることはない。青はただ青いまま。
「おい」
彼女はただの訳ありではない。異常なまでの訳ありである。相手の得体の知れなさに戸惑うよりも先に口が動いた。
しかし少女は呼びかけに気付いていないようだ。胸元を銀色の髪の毛が過ぎていく。その刹那に差している傘に雨を遮られたのを感じたはずだったが、彼女はそれにすら意識がいかないようだ。そう、彼女はこの雨の中、傘すら差していない。そして裸足。さらには死を過ぎていた。
(
放っておくわけにもいかず、
刹那——
正しくは、投げ飛ばされた。
傘は骨をへし折られながらアスファルトに叩きつけられる。
「いだだだだだ! おい、待った! 俺は別にお前に危害を加えようとしたわけじゃあねえよ!」
そのとき初めて、
「
思わず零した言葉に、彼女は首を傾げた。
「フーリ?」
「あ、いや、人違いだ」
「そっか。あたしはフーリじゃなくて
「ああ」
「もしかして、
次第に激しくなっていく雨脚に
「ああ」
その言葉に彼女はパッと顔色を明るくして、関節を解放したかと思うとすぐさま抱き着いた。
「ずっと探してたの!」
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