姫である娘とアイドルである娘

散々としたライブが終わり

人気ひとけが減り、落ち着いた頃。

桃「お疲れ様でした。」

いつもなら見てるはずの桃の笑顔が

新鮮に感じてしまう。

真「おつかれ。」

すうは「お疲れさまです。」

白色の教会に残る

私たちとスタッフたちと…


桃「…お父様。」

その目はアイドルの目ではなかった。

真っ直ぐと、先を見る。

桃「これが、アイドルです。」

その空気感に、部外者である僕たちが入れる隙はなかった。

桃「約束を破ってしまったことは、申し訳ないと思っております。でも、アイドルとしてみんなの前に立つ私は…」

喉の奥になにかが詰まったものを

吐き出すように

桃「…とても楽しいのです!!」

アイドルとして、立派な答えを

桃は口から出した。

姫が語った本音と共に

真の中の何かが揺れ動く。

真「あ、そうか。僕は…」


桃の父「…何を言おうと娯楽でしかないことは変わらん。」

桃「それは…」

みんなして、やっぱり駄目だったかと思っていた。

桃の父「佐久美桃は佐久美家の大切な跡継ぎだ。だからこそ、こんな娯楽でイメージを汚すようなことは赦さなかった。」

ぐっと堪えたように

桃の父「私は、自分が間違っていたなんて思わないが桃がそこまで本気なら、、少しの間だ!少しの間は赦してやる。」 

最後の最後まで素直じゃないな…

桃「ということは…!」

桃の父「真、、えーとすうはさんだったかな。」

すうは「はい。」

桃の父「桃を頼む……」

真「……わかりました。」

ふかふかと頭を下げる。

この人がここまで人に頭を下げたことはあるだろうか。

桃「お父様!!」

桃の父「でも、桃が跡継ぎなのは変わらない!少しでも変なことをしたら桃を返してもらう。」

真「その点はご安心ください。僕たちが責任持って、貴方のお嬢様を御守りいたします。  ね?すうは?」

すうは「え、、あ、、はい!」


桃は笑い、僕たちを見る。

桃「これからも、よろしくお願いします!」


僕たちは、咲久美家の問題を解決できたのだろうか……。

一旦は落ち着いたのだから、今は深く考えるべきではないか。


真「あ、ここの教会ってこれからも使用してもよろしいでしょうか?」

「あぁ、人々を笑顔にしてくれるなら、なにをしても構わない。」

真「ありがとうございます。」

桃「私たちがみなさんを笑顔にしてみせます。」



心のない人形は

アイドルという夢を見つけ

心からの自我を掴み

一人の人間となった。



すうは「疲れたぁ」

桃「お茶ご用意しますね。」

事務所に響く、桃の声。

この感じ、久しぶりに感じる。 

真「ありがと。」

桃「あ、緑林さんもどうぞ」

緑林「わざわざ、、ありがとうございます。」

なにも無かったかのように、僕たちは和やかに過ごしていた。


桃「そういや、あと少しでお盆ですね。」

緑林「あー、そうですね。」

お盆、、もうそんな時期か。

桃「たぶん今年も家族でお墓参りに行くので、2日ほどお休みいいでしょうか?」

緑林「わかりました、社長たちに伝えておきますね。」

桃「ありがとうございます!」

緑林「ふたりは…」

すうは「……」

真「………じゃあ、1日お休みお願いします。」

すうは「ぼくも1日お願いします。」

緑林「わかりました。」





一つの歯車が落ち着いたころ

また一つの歯車が暴れ出す。

連鎖してる歯車が簡単に止まることはない。

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