第38話 予想外の反応
「どうしよう、蝶々たちいい感じだよ」
ついにフラフが喚くが、想像したような返事がない。
「コスモス?」
「…ああ。すみません、何か私に話しかけましたか?」
「もっと危機感持ったら?。もし蝶々があいつとうまくいっちゃったら居候は出来なくなるんだよ?」
「まあ…そうですね」
返事にいつものような鋭さのないコスモスに呆れたのか、フラフは再び蝶々たちの会話に聞き耳を立てた。
「あの…凄く言いずらいんですけど」
「大丈夫です。もう大抵のことでは驚かなくなってるので」
「は、はぁ…」
蜜野さんは意を決したように思い切り頭を下げた。
「申し訳ありませんっ。実はこのお見合い、母が強引に進めたもので」
「え?」
「本当に申し訳ない。言い出すタイミングがわからなくて…」
「あ、いえそうじゃなくて、私もなんです。母が強引に」
話を聞けば、お互い母親が強引にお見合い話を持ってきて断れなかった、ということだった。
「そうだったんですね、よかった。野薔薇さんを傷つけることにならなくて」
安堵した様子の蜜野は「なら」と続けた。
「今日はお見合いとしてではなく、ただ食事を楽しむ会にしませんか? 」
「いいですね、そうしましょう」
食事と会話を楽しんでいると、あっという間に時間が過ぎた。花星さんは花屋とカフェを合わせたような店を営んでいることや、炭酸のような弾ける飲み物やお酒が飲めないことなどを話してくれた。なんてことない会話だが、それがかえって心地いいと言うかなんというか。
とにかく彼はとても話しやすく、活動名は控えたが男装が趣味なことも簡単にあかせた。特に驚いた様子なく、彼は「野薔薇さんは男装も似合いそうですね。きっと玲莉な雰囲気で素敵なんでしょう」と微笑んだ。
「家事も壊滅的に苦手で…」
「人には得手不得手がありますから」
予想外の反応に少し嬉しくなる。花星さんとはいいお友達になれそうだが、会うのは今日限りだろう。強引に見合いをさせられただけの相手だし、なんの接点もない。
「野薔薇がよろしければ、連絡先を交換していただけませんか?」
「え?」
「野薔薇さんとお話するの楽しくて。お友達になれたらな、と」
「そ、そういうことなら」
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