わたしが最近読んだ本(小説)

金木犀さんが書いてくれた「最近どんな本を読んでますか?」というお題について、遅ればながらわたしもひとつ書いてみたいと思ってました。伝言板の書き込みペースが速く、もう10枚目よりも向こうに該当記事が去ってしまったため金木犀さんのメッセージを詳しくは参照できないんですが、このお題について以降、書いていこうと思います。


● 中西智佐乃「橘の家」


文芸誌の『新潮』と『群像』は書店に注文して定期購読しています。最新号である2025年03月号の『新潮』に掲載された中西智佐乃さんの250枚の小説「橘の家」が面白かった。2月26日分の日記にこんな風に書いておきました――。


〈その後、3月号の『新潮』の初めの作品、中西智佐乃さんの「橘の家」を読んでいた。この作品は平易な文体でありながら、現代人にとってはオカルトともいえる局面を多く描くことから、内容自体、文章で表現しにくいものでありながら説得力を有する丁寧さで創作されており、そこに好感を持つに至った。この作家さんの他の作品も読んでみたくなったので、amazonで検索して、『狭間の者たちへ』というハードカバー本を購入した。文芸誌の掲載作を気に入ること自体滅多にないので、こういう機会を大切にしたい。感心したのは、諏訪哲史さんの短編「極光」以来。〉


女性にとって、結婚すること、妊娠すること、子の母になること。社会的因習からの要請もあれば、個人の願望や欲、嫉妬のために、結局個人の力だけではどうしようもなく状況がそうせざるを得なくなってくることもある。菖蒲(わたしの彼女です)はわたしの話を聞いて、これは「呪いかもしれないね」といってくれた。わたしは男性で、女性のことは判らないことも多いけれど、かつての日本の社会は母になることを余儀なくされる空気が醸成されていたんだと改めて確認することになった。そしてラストに描かれる一人の若い女性の態度。これがいまの女性のある種の等身大の意識のあり様を示すかに見えて面白かった。


● 渡部昇一『知的生活の方法』(講談社現代新書)


1976年刊行。出版された時には売れに売れた本。(これは小説ではないんですけどね。)わたしは6~7年前に購入してこれまでに二度通読していたのを、今回また読み直したくなって書棚から取ってきた次第。「自分をごまかさない精神」「古典をつくる」「本を買う意味」「知的空間と情報整理」「知的空間と時間」「知的生活の形而下学」と全部で6章に分かれている。なかには「日本の道路は散歩に適さない、それでも散歩は有効である」とか、本は繰り返し読むべき。読んでいく中で古典は個人の中で意味を成していく、また、そうして長い時間の経過によって社会は古典を持つようになるという話であったり、図書館で借りる本と自分で身銭を切って集めた本のちがい、等々。他の作家さんの著作にも多く見受ける記述にまた出会うことにもなり、篤学の人たちの中では一種の常識だったんだろうなと思われるエッセンスが全編にわたって満ちていた。これは昨夜、三読目を完了。


● 金庸『鹿鼎記(2)』(徳間文庫)

いわゆる武侠小説。清の時代を舞台にした、金庸史上最低の主人公が表と裏の顔を使い分け、為政者たちの間を渉っていく物語。全部で8冊。金庸さんの小説は『倚天屠龍記』、『笑傲江湖』、『天龍八部』は通読したことがあり、今回長編四作目の読み。金庸作品は徳間文庫で出たときに既刊本はすべて購入。書棚に積読してあります。翻訳の読みにくさを除けば、気軽に読みこなすことができて、娯楽小説としての機能を十分に発揮してくれる。どこか活劇を見るようでもある。これは勤務の休憩時間などにちょっとずつ読み進めている。


 あと、丸山健二さんの過去作を二作購入。これはいますぐ読むというよりは収集の意味もあるか。余裕のある時に作品に触れられるといいなと思っていま購入することにした。


● 丸山健二『トリカブトの花が咲く頃(上・下)』(河出書房新社) 2014年刊行

● 丸山健二『雷神、翔ぶ』(文芸春秋社) 1984年刊行


 以前に書いた諏訪哲史さんの短編集『領土』(新潮社)はいまようやく半分ほど読み終えていて、ほかに彼女からのおすすめ本の中村彰彦『いつの日か還る』(文春文庫)も少しずつ読み進め、あとは気が向いたときにかつて読んだ本を数ページ繰ったりもしていますか。昨日はロマン・ロランの『ジャン・クリストフ(一)』(新潮文庫)を数ページだけ再読してました。


 小説はつねに自分の読書のまんなかにある感じです。いつものローダンも最新刊731巻『平和スピーカー』を読了したところ。また数日すれば、732巻が家に届きます。

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そうげんの短篇集 そうげん @sougen01

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