手編みのクサリ


静かな時間が流れる放課後の教室に、オレンジ色の夕日が射し込む。

11月も中旬になると風が少し冷たい。


同じクラスの志嶋実波(しじまみなみ)の誘いで、10月から手芸部に入部した奏浜彩也菜は、窓際の席に机を向かい合わせにし、志嶋実波と一緒にマフラーの手編み作業を進めていた。


卒業を控えた3年の先輩部員たちは、部室である4階の教室には顔を出さ

なくなり、教室にはわたしとさやなの、2人だけ…。


「……はぁ……ちゅ…っ……ぁ……やぁ…」

「…ちゅぱ……あ……その声………かわいぃ…」

「…だめ…だょ……これ‥…ぁ……ぁあ…」

ほんのちょっとくちびるを絡ませるキスをして、首筋に息をかけただけなのに‥、すぐ顔を赤らめて、かわいい声を漏らしながらキスを欲しがるさやな。


今日も人気のない教室の隅で、甘くとろけたひとときを過ごす。

嫌がるさやなの上に股がって、さやなのぷっくりとしたやわらかい

くちびるにキスをする。

先生がいつ見回りに来てもおかしくない状況で、絡み合うスリルがより

興奮をそそる。


さやなの恥じらう顔が可愛すぎるから、つい意地悪したくなっちゃう。

「……はぁ……‥こんな…の…だめ……ぁ……」

「ふふ……いやなの?………じゃぁ…やめちゃう?」

さやなの鎖骨を舌先でちろちろ舐める。

さやなは首筋と鎖骨が弱いみたい、いやらしい声と吐息が耳に心地良い。


「…やめちゃ……ゃ…だ…けど…私……もぅ…」

左手でさやなのうなじをなぞり、右手は太ももの内側を撫でる。

スカートなんてもはやただの布。


さやなの足は徐々に開いてきて、もっと激しいのが欲しいと求めてる。

言葉では嫌と言っていても、身体は正直なんだよね。

でも‥、もう少しだけ、意地悪したいかも‥。


「ねぇ…さやな…歯の裏側ってさ、なぞられるととっても気持ちいいんだよ?…知ってる?」

「……歯の…裏‥?……はむッ!」

みなみの強引なキス、小鳥のようなフレンチキスではなく、舌を絡めたディープキスを要求してきた…。

「…ぁむ……はぁ…ちゅぷ…」

だめだよ‥いまそんなキス‥したら‥私‥本当に…、おかしくなっちゃう……。


 …キーンコーン…カーンコーン…。


18時のチャイムが校内のスピーカーから流れる。

生徒の完全下校は19時。

先生たちが見回りに来る時間だ。


チャイムが鳴るとみなみはスッと唇を離し、私の上から下りた。

乱れた髪をまとめておさげ結いにして、アンダーバストまで外したブラウスのボタンを首元までつけて、黒淵メガネをかける。


「もう時間かぁ…、先生が来ちゃうね。帰ろうさやな」


誰がこんな優等生の見た目をした生徒が、放課後に女の子同士で抱き合っているだなんて想像出来るだろうか。


私…、まだ身体も熱いし…、足に力入らないし…、

…パンツだってぐっしょりだし…。

「……ぅん……そうだね。…帰らないと…ね‥」

みなみは切り替えが早くて、もう通常とおりに動けるの‥?


それにしても、みなみはいつこんなテクニックを覚えたのだろう。

学校の中では男子と歩いている姿は見ないから、彼氏が居るわけでは

なさそうなのに。


裁縫道具と網みかけのマフラーと毛糸をBOXにしまって、

ロッカーに片付ける。

換気のために開けていた窓を閉め、教室を出る。

手を繋いで階段を降りる。


「ねぇ‥、みなみは‥彼氏って居るの?」

「ん~?どして?」

「こんなえっちなこと‥どこで覚えたのかなぁと思って」

「彼氏はいないよ。さやなにやってるキスや愛撫は、私が気持ちいいと

思ったやつを試してるだけ」

「そうなんだ‥彼氏‥居ないんだね‥」

「私に彼氏が居たら‥さやなはショック?」

「ショックじゃないけど…、彼氏さんに悪いかなって…」


階段を降りて2階の踊り場にさしかかった時、みなみは私より階段を3段先に

降りて、私のスカートの端を持ってスカートの中に風を送り込む。


「‥ひゃぁ!‥もう!‥だめだってばぁ…」

いま私のパンツは濡れているから‥、風に晒されるとひんやりする…。

「ふふっ、私も一緒。もしさやなに彼氏が居たら、私もこんなこと

 やってないよ」

「そっか‥、じゃぁ‥良かった…」


下駄箱で内履きからローファーに履き替え、校舎口を出る。


「月曜日はさぁ‥、パンツ脱いでやってみる?」

他の生徒に聞こえないように、小声で私に耳打ちをするみなみ。

「ちょっとぉ!‥そんなのだめだょ‥」

恥じらいながらも少し期待しているような、さやなの困惑した顔が

とっても可愛い。


名残惜しそうに手を離して、正門で別れる。


「わかった。じゃあ、また月曜日ね」

「うん…。またね」


土曜と日曜は部活が休みだから、休日にみなみと会うことはない。

私が土曜と日曜の昼間にバイトを入れなければ、会う時間は作れるの

だけれど、学費とアパートの家賃を自分で稼いで払わないといけない

私には、そんな時間もなくて…。


バイトをしている最中も、寝る前も、私はみなみとのキスを思い出しては

悶々としながら日々を過ごしている。

身体はみなみのキスを求めてる…。

私って‥、こんなにえっちだったんだ‥。

みなみは‥、休みの日、私のことを思ってくれているのかな‥。


_____


「おっはよ!さやな、ちょっと遅くなったね」

「おはようみなみ。大丈夫だよ、遅刻じゃないから」


8時10分。朝礼の時間にはまだ間に合うね。


正門前で待ち合わせをして、一緒に教室に向かう。

そしていつも通りの月曜日が始まる。


「今日から体育、体力測定だってぇ」

「シャトルランあるよね…私、苦手かも‥」

「ぁ、私も~」


1学期の間、私がいじめの被害者だったことは、そう簡単に忘れて

もらえるわけもないから、今もまだクラス内では孤立気味ではあるけれど‥。


みなみと一緒に行動しているおかげで、私はクラスのいじめっ子たち

の標的にはならなくなったから、みなみが私を手芸部に誘ってくれて、

仲良くしてくれていることは、本当に感謝している。


教室では席が離れているから、授業中はみなみと会話もしない。

移動教室の時に廊下を一緒に歩くぐらい。

私もみなみも、授業中は真面目に授業を受けているし、目立つような

言動も無いようにしている。


放課後になって4階にある部室に入ると、どちらともなく手を絡めて、

抱きしめ合って甘い言葉をささやく。


「今日のさやな、少し色っぽいね。チーク変えた?」

「うん。みなみに可愛いって思って欲しくて、さくらピンクのチーク、

 買ってみたの」

「うん。すごく似合ってる。かわいい‥」

「嬉しい‥、ありがとう。みなみも今日の髪さらさらで良い匂いする。

 この匂い‥好き…」

「ぁ、そうなんだ。良い匂いする?ホテルのシャンプーが良いからかなぁ」

「‥ホテル?」


ガラガラと教室のドアが開き、顧問の先生が入ってきた。


「おはよ~。奏浜さん、志嶋さん」

「「おはようございます先生」」


先生が居る間は、あくまでも普通の仲良しな部員として接する

フリをする。


いつも通り、窓際にある机と机を向かい合わせに付けて、

裁縫道具と編み物の入ったBOXをロッカーから出す。


「おぉ~、良い感じに進んでいるねぇ。奏浜さん、やっぱり編み物の

センスあるわよ」

「え、そうですかぁ?志嶋さんの教え方が上手だからですよぉ」

「そんなことないですよぉ」


顧問の中野先生は、手芸部と演劇部の掛け持ちをしているから、

最初の数10分だけ私たちの様子を見て、あとは演劇部の指導に行って

しまう。


「それじゃあ、その調子でマフラー編み進めてちょうだいね」

「「はーい」」


2人っきりになってからが、私たちの時間。


みなみは黒淵メガネを机の上に置き、おさげ結いにしていたヘアゴムを

ほどいて、ブラウスの首元のボタンを2つ外す。

「今日は‥、さやなが私の上にきて‥」

みなみは椅子に座って、両手を広げて私を迎え入れる。

「……ぅん」

私はブレザーを脱いで、みなみの太ももの上に足を開いて乗る。

「ぁ、今日は素直だね‥。もしかして‥楽しみにしてた?」

「ぇ‥‥そんなこと‥なぃ‥‥‥ぁ」

みなみは私の腰に腕を回して、私を抱き寄せる。

それを合図に、私はみなみの艶のあるくちびるに、小さなキスをする。

「‥ん‥、さやなが私を求めてくれるの…、すごくうれしい‥」

「ぅん‥、みなみとキスするの……好きだから‥」

「私も‥さやなのキス…好きだよ‥」


男性経験のない私には、男の人を好きになったり、

彼氏とデートをするなんて想像もつかないけれど。

私がみなみを想うこの気持ちは、

間違いなく、恋人に向ける"好き"だから。


みなみは私のスカートの腰のファスナーを下げて、スカートの中に

手を入れて私のお尻を撫でる。

「あれ…紐パンじゃん‥。えっちだね‥さやな‥」

「…脱がしやすい‥でしょ?」

私と一緒に過ごすようになって、

さやながどんどんえっちな女の子になっていってる。


さやなは勉強熱心な子だから、私の知っている性知識なんて

すぐ上回っちゃうね。

「ふふっ、私もね‥。今日は朝からノーブラだったよ、気付いた?」

「‥そうなの?」

「いいよ…、さわって‥」

するとみなみは私の手を取って、みなみのブレザーとブラウスの間に

私の手を誘導する。


「…本当だ…。もうこんなに‥熱くなってる‥」

ブラウスの下は薄いキャミソールだけ。

ブラジャーという邪魔な壁が無くなるだけで、

心の距離も一気に縮まり、お互いの興奮度は更に高まる。

「動くたびに擦れるから‥。今日‥、ずっとムラムラしてたんだ…」

私より2カップも大きいみなみの胸のふくらみ。

興奮して発熱しているのが分かる。


するとみなみは、私のブラウスの胸のボタンを1つ外し、

左手だけで器用にブラジャーのフロントホックを外した。

「これでいっしょだね。谷間に汗かいてるね…、あつい?」

「‥言わないでよ…、恥ずかしいもん……すごく‥」

みなみのねっとりとした口調と上目遣いがえっちすぎる…。

私の頭の中はもう真っ白だよ…。

私‥今どんな顔してる‥?


「‥みなみ…キスして‥」

「‥潤んだ瞳…すごくかわいい…‥‥ちゅ」


キスを交わす間も、お互いの手の位置は変わらない。

みなみの左手のひらは、私の右胸全体を優しく包み、人差し指と中指で

乳首をそっと摘ままれる。

私も少しだけ対抗して、キャミソールの上からでも分かるほど、

ぷっくりと浮き出たみなみの乳首を親指で撫でる。

「ん…‥さやなの胸……やわらかくて、あったかくて‥気持ちいいね…」

興奮して熱くなったさやなの胸は、お湯の入った水風船ように

むにむにで触り心地が良い。

「…っちゅ……ぁ…、ん‥…もっと……強くしても……いいよ‥」

無意識に自分の口から出た言葉を思い出し我にかえる‥。 

‥あれ‥私…いま…何を言ったの…?


「‥ん……良いの?…声‥我慢できる‥?」

「待って、まだ…心の準備が…」

私のお尻を撫でていたみなみの右手は、お尻を離れブラウスのボタンを

下から外していく。

首筋に息をかけられただけでも、声が出ちゃうのに‥。

これ以上激しい愛撫をされてしまったら‥、私は声を我慢することが

出来ないと思う。

そうすれば、先生や他の生徒にも聞こえてしまう。


あっという間にブラウスのボタンは外され、私のブラウスを留めているのは第3ボタンだけになった。


「あ、ほくろ見っけ。‥ハートの形してるね」

「‥ひゃぅ!…ぁ……くすぐったいよ…」

私をウエストを両手で鷲づかみにしたみなみは、私のへその上にある

ほくろに舌先を付けてきた。



…ブー、ブッブー、ブッブー…



携帯電話のバイブ音が、みなみの着ているブレザーの胸ポケットから鳴る。


「…もぅ…いいところなのに‥」

ケータイのバイブで集中が切れたみなみは、

私のお腹から顔を話し、携帯電話の着信画面を確認する。

「…どうしてこんな時間に…」

「‥誰から?」

着信画面の宛名を確認したみなみの顔が一瞬だけ曇った。


「ぁ、これ…、いいかも…」

「みなみ?」


みなみは着信には出ず、バイブの鳴り止まないのケータイを持ったまま、

私の顔を見てにやりと笑みを浮かべる。


するとみなみは、私のスカートの中に携帯電話を潜り込ませると、私のお股に携帯電話の角を押し付けてきた。

「‥あぁ!‥ちょ……ぁ、やだぁ…‥!ん…、ぁ‥」

一定のリズムを刻み振動する携帯電話のバイブの刺激が、下腹部と背中を

駆け巡る。

「‥すっごいえっちな声‥」

「‥これぇ…、ゃ‥…だめぇ…‥」


みなみから受けた愛撫で、ただでさえ敏感になった身体に、

今まで経験したことのない刺激が加わる。

 

…これが"気持ちいい"っていう…感覚なの‥?…すごく…、くせになりそう‥。


バイブの振動に合わせて身体がヒクヒクと痙攣を起こす。


「そんなに気持ちいいんだぁ‥、ケータイのバイブって」

「…ぁ……ん…、すごい……これぇ‥。……あっ」


身体に力が入らなくなって、椅子から転げ落ちそうになった。

どうにか転ばず床に足は着けたけど、足腰に力が入らなくて、

机にもたれ掛かった。

「ちょっと‥大丈夫さやな‥」

「‥だって、足に‥力入らなくて‥」


まだ鳴り止まない携帯電話の着信にしびれを切らし、

みなみは電話に出る。


「はい。もしもし?‥どうしたんですか?こんな時間に‥」


私との時間を邪魔されたこともあり、みなみは少し不機嫌そうに相手と

通話をしている。


「今日この後ですかぁ?急ですねぇ‥。金曜日の夜なら大丈夫ですけど‥」


みなみが相手と通話している間、

自分の衣服のはだけ様を改めて見て恥ずかしくなり、ブラジャーのフロントホックとブラウスのボタンを付け直した‥。

 …もう一回…、バイブ当てて欲しいなぁ……。

 ってやだ私!‥変な期待…しちゃってる…。


「は~い、わかりましたぁ。じゃぁ金曜日ですね。うん、バイバイ」

みなみは通話を切った。

誰かと会う予定を立てたようだ。

「電話誰からだったの?」

「ん~、"ヤマトさん"っていう、お金くれるおじさん」

「おじさんって…、その人と会ってみなみは何をー」


「いや~参った参ったぁ。おつかれ~」

顧問の中野先生がドアを開け教室に入ってきた。


「って‥、どしたの奏浜さん。ブレザー脱いで‥、窓も開いてるし。熱い?」

「えっ!あっ!これは‥その…」

さっきまで女の子同士でイチャイチャしていたなんて、言えるわけもなく‥。


「あっ!それと志嶋さん。携帯電話は校内では禁止だぞ?没収するぞ

 こんにゃろー」

「あぁ、そうですよね…、ごめんなさい先生‥」


先生に注意されたので、ケータイをカバンにしまった。


「中野先生こそ、演劇部の指導だったんじゃないんですか?」

「あ~。演劇部の生徒ね、今日インフルエンザで3人欠席みたいなのよ。

 今日は4人しか部員が居ないから、台本読みと自主練にしてきたわ」


「インフルエンザですかぁ‥、流行ってますねぇ‥」

な~んだぁ‥、これから楽しくなるところだったのに‥。


「それじゃぁ、今日はもう私たちと一緒に居るんですか?」

…あぁ…、まだお腹がピクピクしてるよぉ…、編み物どころじゃないよ‥。


「いいえ、今日はあなたたちはおしまい。インフルエンザも流行ってきて

 いるから移らないようにね。片付けをしたらもう帰って大丈夫よ~」


「あ、そうなんですか!」

「「ありがとうございます先生」」


思わぬ先生の報告に、2人揃ってお礼を言った。


「じゃ!私は演劇部に戻るから。おつかれ!」

先生はそう言うと、教室を早足で出て行った。


「あ~ぁ、すっかり気分が冷めちゃったね」

「そうだね…」


道具をBOXにしまってロッカーに片付ける。

窓を閉めて、カバンを背負う。


「ねぇさやな。これからお家に来ない?」

「みなみのお家?良いの?」


時間はまだ16時を回ったところだった。


「うん。この続き、お部屋でしようよ」

「ぁ……うん‥。いく‥」

「おっけー!決まりね!」


学校を出てみなみのお家に向かうことになった。



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