第80話 冬の章(8)
女の子の表情がピクリと動いたことを見て、フリューゲルがすかさず言葉を繋げた。
「大丈夫。そんなに警戒しないで。実は僕も人じゃないんだ」
女の子が怪訝そうに私の方を見るので、私は静かに頷いた。
「私たちは、あそこから来たの」
私が人差し指を一本、空に向けて立てると、それにつられるようにして、女の子が空を見上げた。それからしばらくの間、私たちと空を交互に見比べていたが、やがて、小さく口を開いた。
「もしかして、あなたたちは、天使なの?」
女の子のその問いに、私とフリューゲルは顔を見合わせる。言ってはみたものの、こんなにもすんなりと私たちの存在が受け入れられるとは、正直思っていなかった。この子は、とても素直な子なのだろう。
「そう。天使……って言いたいところだけど、実はちょっと違うの。私たちは、まぁ、えっと、天使の見習いみたいなものかな」
下界では空の上に住まう者、イコール天使と認識している人たちがほとんどなので、ここで「私たちは
しかし、天使様を語ろうなど、恐れ多いことなので、下界の人に分かりやすく、天使の見習いということにする。
チラリとフリューゲルをみれば、小さくコクリと頷いてくれた。どうやら、彼も私の考えに賛成のようだ。
「僕たちは、きみが昇華するのを手伝いたいんだ」
「昇華?」
女の子の願いを叶え、本来の魂の元へ戻る手伝いがしたいと話しているうちに、女の子がとても可愛い笑顔を見せてくれるようになった。ひと通り話し終える頃には、すっかり私たちに心を許してくれていた。
「私は、お姉ちゃんと一緒にもう一度、ここのお花が見たい。それが叶えば、もうそれ以上の事は、望みません。天使様」
「分かった。まずは、ここに綺麗な花を咲かせる事が最優先だね」
女の子の望みを再確認した私とフリューゲルは、しっかりと頷いた。
それから私たちはガーデニング作業を開始した。とは言っても、専ら動いているのは私だけ。女の子はフリューゲルに捕まり、色々と質問攻めにあっている。
自分の存在がわかる相手がいることが嬉しいのだろう。フリューゲルの口の端は、上がりっぱなしだ。
そんなフリューゲルの姿を見て、私が一人クスクスと笑いながら作業を進めていると、私たちのいる中庭に一際元気な声が響いた。
「あ! いたいた。つばさちゃーん」
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