第79話 冬の章(7)

「……惹きあったのかな?」

「え? 何? どう言うこと?」


 ポツリとこぼれ落ちたフリューゲルの言葉に私が首を傾げると、それを見たフリューゲルは、のんびりと首を振った。


「ああ。えっと……なんでもない。この地に本来いるべき者じゃない同士だから、出会ったのかなって」

「ああ。なるほど。そういうこと」


 私が納得しているそばで、フリューゲルは何かを考え込んでいるようだったが、しばらくすると、相変わらずののんびり口調で口を開いた。


「僕も、そのココロノカケラに会えるかな?」

「え? ああ。うん。まだ花壇に居れば会えると思うよ。まぁ、この学校に思い入れがある子みたいだから、今日会えなくてもいずれは会えるはず」


 いつの間にか私たちは普段通りに会話を交わしていた。まぁ、それでこそ双子Noelノエルと言ったところだろう。


 二人揃って花壇に戻ると、例の花壇の前には先ほどの女の子がいた。相変わらず熱心に花壇を眺めている。


 少女の後ろ姿を認めた私は、フリューゲルに小さく耳打ちをする。


「ほら。あの子。不思議な気配のする子よね?」


 女の子の後ろ姿をじっと見つめていたフリューゲルは、私の言葉にコクリと頷いた。


「確かに。下界の人とは少し違うみたいだね。でも、どうしてココロノカケラだと? 自分でそうだと言ったの?」

「ううん。彼女自身は、自分がココロノカケラだってことも知らなかったみたい。でも、どうやら強い想いがあるみたいなの」


 先ほど女の子から聞いたことを掻い摘んで話すと、フリューゲルは納得したようだった。


「それは確かに、ココロノカケラかもしれないね。心の一部がこちらに留まっている限り、彼女は転生が出来ないからね。なんとか僕たちで昇華させてあげられると良いのだけど」


 フリューゲルはそういうと、ゆっくりと小さな背中に近づいた。私もその後を追いかける。


「お待たせ。肥料持ってきたよ」


 近寄りつつ女の子に声をかけると、振り向いた女の子の目は、私ではないところで釘付けになった。どうやらフリューゲルのことが見えているようだ。やっぱりこの子は普通の人間じゃないみたい。


「あ〜。えっと、もしかしてだけど、見えてる?」


 フリューゲルの事を指差し、曖昧に聞いてみれば、女の子がコクリと頷く。それを確認したフリューゲルは、嬉しそうに頬を緩ませて、小さく片手を上げた。


「やぁ。こんにちは。この世界で僕のことが見える人に出会ったのは初めてだよ。ああ、正確には人じゃないのか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る