第17話 春の章(5)
考えてみれば、これまで常に一緒にいたフリューゲルと、またいつでも話ができるようになったのだ。それだけでも十分じゃないか。もう、私は一人じゃなくなったのだから。
すっかり萎れてしまったフリューゲルに、私は明るく声をかけた。
「ねぇ、フリューゲル。下界からはね、どんなに空を見上げても雲の上にある
「うん。それなら任せて。なんでも聞いてよ。と言っても、
顔を上げたフリューゲルは、いつもの様に的確に事実を述べる。そう、彼はそれでいい。フリューゲルは、いつもの落ち着きを取り戻したようだった。
「それじゃあ、
「
「そうなの……。それについて司祭様は何か仰ってるの?」
「何も。他の
「やっぱり、
「司祭様がそう仰るんだから、きっとそれしか方法はないんだよ」
やっぱり、私がすべき事は『学ぶ』ことなのだろう。それは分かっている。司祭様の仰ることに、私たちはいつだって従ってきた。そうすることが当たり前なのだ。
ただ、私はここで何を学べばいいのか、それが分からない。大樹を救う方法が下界にはあるというのか?
「アーラ、どうしたの?」
無口になった私を気遣うように、フリューゲルが声をかけてくれていたが、考え事に夢中になっていた私には、その声はほとんど聞こえていなかった。
これから先、何をどうすれば良いのか。歩きながら必死で考えていると、塀に貼られたポスターが目に留まる。何かが心に引っかかり、私はポスターの前で立ち止まった。
それは、大きな1本の木が中心に
“守ろう森林 増やそう豊な緑”
そんなスローガン付きのポスターの発行元は『日本森林保護団体』というところらしい。
中心の木はまるで、
「森林保護団体の人に会ってみようかな」
「どうして?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます