雲の上は、いつも晴れだった。 ~本編~
第8話 プロローグ(1)
ピンク、緑、赤や白。カラフルな色がたくさん混ざる下界には、いつだっていろんな変化がある。晴れの青、曇りのグレー、しとしと雨の水色、雷雨の黒や黄色……。天気も下界を彩る変化の1つだ。
いつだったか、下界に降る雨は誰かが流した涙だと聞いたことがある。誰かが泣いた分だけ、下界には彩りの雨が降る。
だけど下界とは違い、ここには雨なんて降ったことがない。
見渡す限り白と青の世界。それが私のいる世界。天界の最下層にある
そんな白と青の世界に住む住人たちを、下界では『天使』なんて呼んだりしているようだ。でも私は、天からの使者ってわけじゃない。だから、私たちを『天使』と言うのは間違っている。
この庭園で暮らす者は
下界では、雲の上で暮らす者には羽があり金の
いつかは私にも羽が生えるかもしれないけれど、それがいつなのかはわからない。なぜなら、天使となった者たちはみんな庭園から姿を消してしまうから。残された私たちNoelは、ある経験がいったいどんな事なのか、いつが自分の成長時期なのか、誰も知ることができない。
本当は庭園には、羽と金の環を持つ天使様がお一人だけいらっしゃる。私たちNoelを取り纏める司祭様だ。司祭様はいわゆる天使のイメージがピッタリなお方。そんな司祭様に、私たちはどうすれば成長できるのかと伺っても、「経験すればわかることだから」といつも多くは語って下さらない。
司祭様にずいぶん前に教えていただいたことがある。Noelと下界の人は、見た目は同じでも大きく違う点がある。それは、庭園には涙を流す者がいないということ。白と青の世界の住人は、変化のない天気と同じ。いつも変わらない。怒る事も楽しむ事も、悲しむ事もない。
喜ぶ事はほんの少しだけある。でもそれも、下界の人が見たら喜んでいるのか分からないくらいの喜び方なのだけれど。
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