葬官サイハテ。彼女は葬送を依頼されれば国境をこえて赴き、絶対に良い儀式にするという信念を持っていた。たとえ、相手が生前に極悪非道の限りを尽くした存在だったとしても。
読んでいて、とてもあたたかい気持ちになれる作品でした。「『お疲れ様』を言ってもらう権利は誰にだってある」。このキャッチコピーが心にしみました。
まずサイハテの葬送にかける思いがとてもあたたかかったです。
「笑顔は溢れない、楽しい思い出じゃない……でもやってよかったと言える儀式にするんだ」
この台詞のとおり、彼女は死者と生者の両方に大きな敬意をもって接し、大切なお別れの時間を何にも邪魔されず過ごせるよう、時に無茶をしながら葬官としての信念を全うします。
作中の世界には様々な立場や情勢が存在し、「こんなヤツの葬送は不要」と儀式を軽んじ、妨害してくる者も現れます。しかし、サイハテはそれを絶対に許しません。世間からどう言われていようと、生前関わりのあった者からすれば、送り出す死者は心から大切な存在。その思いをサイハテは絶対に尊重します。儀式を邪魔する者があれば血みどろになってでも止め、お別れの時間を守り抜きます。
また、生者の思いを尊重するということは、彼・彼女たちの悲しみや葛藤に寄り添い、解きほぐし、「どんなお別れをしたいのか?」という本心を照らし出すことでもあります。サイハテと関わり、葬送を通して、たくさんの登場キャラクターたちが己の生き方も見つめ直していたように思います。
どんな儀式にしたいのか?を決める過程で最も寄り添うのは、もちろん亡くなった側の心です。信仰は何か?といった形式的なことはもちろん、サイハテは死者が喜んでくれるような儀式を心がけ、生前に遺された要望があれば、それがどんなに実現困難なものであっても、叶えるために全力を尽くします。
あたたかいのはサイハテだけではありません。死者を弔う者たちの思いも、本当にあたたかいのです。
どんな儀式にするか決める過程、そして儀式の最中にも、弔う側は死者の在りし日を思い浮かべます。そうして込み上げてくる感謝や愛情などの思い・言葉からは、死んでも切れることのない強い絆を感じました。
特に儀式のシーンでは、読者である私自身も参列者のひとりになったかのように悲しさやあたたかさを感じました。みんなと一緒に心から死者を送り出し、いい儀式になって本当に良かったと嬉しく思いました。
もうひとつ。サイハテを思う者たちの気持ちもあたたかかったです。
葬官である彼女は世間から嫌われているのですが、そんな彼女のことを大事に思っている者たちも確かに存在するのです。
この作品を通して、人間のあたたかさとは他者の心に寄り添うことなのかもしれないと思いました。葬送をテーマとしつつ、生きるということをこの上なく描いている作品。キャラクターたちの思いや成長を通して、そんなことを感じました。
儀式の段取りやその意味等の文化的な描写も興味深く、面白かったです。
素敵な作品をありがとうございました!
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