第十一話 「黒く動き出す」
わたしは笑顔を決して崩さず、三人にそう告げ手のひらを向けた。
……正直に言うと、これからのことが怖い。
けれど、わたしが決めたことだから。
「……あ、うん、そうなの。ちょっとビックリさせようかなって!」
「絵穹ちゃん見てたなら早く言ってよ〜」
「ネタバレするタイミング無くしてたんだよね〜」
教室中から視線を集め焦ったのか、三人は慌ててそう言うとわたしの手にシャーペンを置いた。
わたしはあくまで、人当たりの良い無知な笑顔を浮かべて三人と話す。
そして蘭を振り返り、彼女にシャーペンを握らせた。
「え、絵穹……」
「うん? はい、シャーペン」
「あっ、ありがとう……!」
蘭は嬉しそうにシャーペンを握り、わたしに笑みを向けた。
わたしはそんな蘭に笑みを深めるだけで、返事をすることはできなかった。
──蘭にお礼を言われてそれを受け取れるほど、わたしは……。
わたしが席に戻ると、瑠梨は暗い顔をしていた。
「……絵穹ちゃん。何で急に、蘭ちゃんのこと助けたの? いや、良いんだけどね……なんか……」
瑠梨は不満そうな顔をして、わたしを問い詰めすぎないようにしながら訊いてくる。
わたしは少し考えてから、ポツリと呟いた。
「前から決めてたんだけど……。友達になった、から?」
「わたしの知らないところで?」
「え?」
「……なんでもない」
瑠梨は納得のいかないような顔をしながら自分の席に戻って行った。
わたしは困惑しながらも、女子特有の何かかな……と考えていた。
その日から、綺花、葵、美菜、瑠梨からの態度がよそよそしくなった。
蘭もそのことを気にしているようで、わたしを見ると気まずそうにしている。
わたしは最初こそ気分が沈んでいたが、数日も経つと意外にも慣れてしまった。
とは言え、誰ともあまり会話をしないと寂しいものだ。
体育祭練習でみんなが和気あいあいとしている中、わたしは退屈な日々を過ごしていた。
──まあでも、仕方がない。
自分も虐められなかっただけマシだろう。
綺花達三人は案外バカではなかったようで、わたしがクラスメイトの前で牽制をしたときからイジメはしなくなっていた。
そのため蘭に声をかける女子がチラホラと現れている。
わたしは嬉しくもならず、悲しくもならず、ポケーッと生活を送っていた。
普段は感じていた季節の特徴や天気も、あまり感じ無くなっていた。
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