2-4. 今後の予定
「それで……冒険者になるのか?」
男の処遇が決定した後、冒険者組合長アダロフはヴェンリオにそう問う。よりによって自分に絡んできた男を仲間にすると言ったからだ。
男がどうなろうと結局は自業自得でしかないのだが、仲間にするのであれば基本、冒険者としてパーティーを作ることになる。
無所属のまま組むのか否か。アダロフが知りたいのはそこだった。
「はっ、なるわけないだろ。得がない。」
「そうか。才能はあると思うが、残念だ。」
その全てに噛み付く血の気の多さに、成人すらしていなさそうな若さ。何より強さ。
荒くれ者と呼ばれる彼らの中で上に行く素質があると判断したアダロフだったが、残念ながらその気性の荒さを自身が宥める自信もなく、無理な勧誘はしなかった。
こうして場の空気を完全に掌握した小さな戦士は、未だに伸びている男を引きずりながら組合を後にする。
「じゃあな大男。また来る。」
その言葉に多くの冒険者が口元をひくつかせるが、声は出さない。
彼らは馬鹿だが死にたいわけではないのだ。
これはヴェンリオが現れてからたった数分の出来事。彼が去ってから冒険者たちが飲み直すまでには、それ以上の時間が経ったのであった。
――――――――――――――――――――
名前:カスマン
種族:人族Lv.21
HP:553/761
MP:354/354
物攻:82
魔攻:51
物防:152
体力:103
魔防:126
敏捷:62
スキル
盾術Lv.2 下民Lv.2 平民Lv.3
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「ふっ、ぴったりだな。」
獲得した男を解析し、その名前を鼻で笑う。
それにスキル。あの感じで、堅実に盾を持ってパーティーに貢献していたのだろうか。
ステータスからはその者がどう生きてきたかがおおよそ把握できる。他人の解析は、ある意味最高の暇潰しと言えた。
「……にしても、思ったより育ってるな。」
ゴブリンにやられた男パサロ曰く、この街は王都と呼ばれる首都の次に広く、栄えているらしい。昼間に呑んだくれているような連中……このカスマンでさえ、レベル20を超え戦闘用のスキルを所持している。
ヴェンと違いレベルを上げる機会が多いが故に、ヴェンより平均的な強さが高い。
そして当然平均値が高いのだから、ヴェンでいうザクロやガルドのような上澄みは、想像もつかないほど高みにあるはずだ。
「少し予定を変えるか。」
生き方を変えるつもりはないが、その生き方を貫くにはどうやら早急に更なる強さを得る必要があるらしい。
ならまずは、と、情報源を起こすことにする。
「おい、いい加減起きろカスマン。
人だかりの少ない道で、カスマンの頬を叩く。
盾術の使い手でタフだったのか、カスマンはすんなりと目を覚ました。
「う………あっ、お、お前!!」
「態度に気をつけろ。お前は俺の下についたんだからな。」
「下……?な、何の話だ!」
冒険者組合長とのやり取りを聞いていなかったカスマンに、ヴェンリオの主張は理解できない。仕方なく、経緯を説明してやる。
もちろん都合よく内容は改変して。
「そんな……組合長が、俺を売るなんて……」
「ああ、快く譲ってくれたよ。
そして改変された内容を頭の悪い男がなる職業筆頭、冒険者のカスマンは信じた。
「心配するな。お前は俺の下についたんだ。無茶な命令はしないし、敵からは守ってやる。」
「なっ……そんなの信じられるわけ!」
「信じてた組合長には裏切られただろ?だが、俺はアイツとは違う。お前が俺の物になったからには、大切にするさ。それなりにな。」
この言葉に嘘はない。万が一のための肉壁ではあるが、奪われることが我慢ならないヴェンリオは、たとえカスマンであろうと守るだろう。
その思いが伝わったのか、カスマンはゴクリと喉を鳴らした。
「……それで、俺を下につけた理由は何だよ?なんとなくか?」
「いいや?いつかは戦力にするつもりだが、知りたいことがあったからだ。」
「知りたいこと……?」
人間性も良いとは言えないカスマンに求めてるのは、組合長など、表向きまともに振舞っている者からは得られないような答え。
「まずは迷宮ってのに案内しろ。話はそれからだ。」
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