第6話 集会場で



 香子は鬼の国の内部を歩いていく。


 鬼の気配のないしんとしずまった夜は、不気味さを感じた。


 見慣れない土地にいる心細さを、彼女は急に感じる。


 祭りのためにか、あちこちに飾ってあった鬼の顔を描いた仮面などが、不気味さをひきたてた。


 何度か迷った香子を手助けしたのは、鬼の国では珍しい犬だ。


 首輪のない犬が薫子を大きな建物へ案内して、そのあとふっといなくなってしまった。


 動くなにものかの声と気配を感じ、香子はそれらしい建物へ辿り着いたのだと判断する。


 大人数を収容できそうな建物が、数えるほどしかなかったのが幸いだった。


 集会所らしき場所に足を運ぶと、内部に鍵はかかっていなかった。


 建物の中に入った香子は、集会所の中央に倒れていた子供達を見つけて駆け寄る。


 子供達にけがはなく、みな眠っているだけのようだった。


「無事でよかったわ」


 ほっとする香子の前に姿を現したのは桃鬼と、数人の白い角の鬼たち。


 「今日あったばかりの人間のためにこんなところにくるなんて、人間ってお人よしなのね」


 蔑みの笑みを浮かべる桃鬼は人間を見下してるようだった。


「一鬼はどうにかして人間と友好的な関係を築こうとしているみたいだけど、そんなのさせないわ。どうして下等な種族と対等になってあげなくちゃいけないの?」

 

 桃鬼には人間に対する認識が歪んでいた。


「私達鬼みたいに力も使えないのにね」


 それは彼女の両親から、絶えず「人間は下等だと」聞かされ続けてきた弊害だった。


「だから、あんたの存在は邪魔なのよ。さっさと排除させてもらうわ。そして私が国の長になるの!」


 桃鬼は、空中に白い炎を出現させる。


 それは鬼が仕える鬼火という特殊な力がなせるものだった。


 桃鬼が出現させた炎は全部で10。

 それらが一斉に香子に襲い掛かろうとした。


 しかし、寸前で空中に出現した黒い炎が白い鬼火にぶつかって、香子を守った。


 それは、黒い鬼火だ。


 触れる者を全て吸い込んでしまうような、そんな印象を抱かせる、真っ黒な色の炎。


 それらを出現させたのは、一鬼だった。


「香子が部屋にいないから探してみれば、こんな事になっていたとはな」


 一鬼は桃鬼と、眠っている子供達、香子を見回してそういう。


 最後に桃鬼に視線を戻した彼の表情は怒りで染まっていた。



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