第14話

「お嬢様、お話があります。」


「………………………………………何かな?料理長?」


朝食が終わり、紅茶を味わっていると料理長に声をかけられた。

本来ならば私に伝えたいことがあるなら、立場的に執事かメイドを通すべきなんだけど、無視するのも如何かなと思ったのでお返事はしてあげた。


「良質な食材をご用意していただき、ありがとうございます。新しい執事に聞きましたところ、お嬢様の手配だと伺いまして。」


いつもは無口な料理長が、早口で一気に伝えてきた。


「あら、どういたしまして。」


「本当に素晴らしい食材です!新しいレシピもいただけましたので、これからも日々研鑽に励みます。」


「そう、良かったわね。」


私は何もしていないんだけど。

ここまでお礼を言われ続けると、恥ずかしくなるわね。


「ねえ、マーオ?」


部屋へ戻り、執事見習いとなった魔王に、尋ねる。


「良いのかしら?魔境に有った食材を提供しても?」


「現状、お嬢様方に提供しているだけですから、よろしいのではないでしょうか?」


「えっ、そうなの?」


「魔の森産の食材の下処理には、膨大な魔力が必要ですから。」


「………………………………………誰が魔力を提供してるのかな?」


「私ですが?」


………………………………………なんという魔力の無駄遣い!


「………………………………………今日限りで、やめて頂戴。」

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