悪運統べるこの異世界〜器用貧乏ですから、弱くても使えるものは何でも使って生き延びます!〜

藤倉(NORA介)

第0話 私と俺の記憶(プロローグ)

 村は燃え、人々の悲鳴が飛び交う中で私は何も出来ずに佇んでいた。夜を照らす炎は燃え広がり、目の前では魔獣が次々と人を喰らう光景が繰り返される。


 全てに恐れを抱いた私は、足を竦ませて全てを諦めていた。あぁ、そうか私はここで死ぬのか…誰の役にも立てずにこのまま…


 魔族と人間のハーフとして産まれた私は、魔族の世界では生きられず、人間の村で母親に育てられた。父親は私が産まれる前に亡くなったと母には聞かされていた。


 太古から魔族は恐怖され、疎まれるのが世の常だ。当然、私は村の人間達にイジメられた…母も魔族というだけで迫害されていた。


 母が病で亡くなってからは、更にそれは酷くなった。私は周りから役立ずと言われ、皆んなから罵られた。


…だから見返してやろうと思った。強くなって、役立ずなんてもう言わせない様に…だけど、そうはなれなかった。


 そして、そのまま食い殺されるのが、私…──ジュディの運命だと思った。


 空を裂く様な咆哮と共に現れたのは伝承に聞く怪物だった。母が小さい頃に読んでくれた御伽噺おとぎばなしに出て来た空飛び火を噴く巨大な怪物。


「いっ、いやぁっ……」


 それは大きく息を吸い込み、炎として私に放った。その熱は私の肌を焼きながら正面で爆ぜた。


 熱い、熱い…まるで骨まで焦がす様な熱が身体を包んでいる。声を上げる暇も無く爆炎が私を焼いて、気付けば身体は宙に浮いてしまっていた。


私はそのまま真っ逆さまに水底へと落ちて行った。意識は、身体の急激な冷えと共にぼんやりと薄れていく。私はこのまま死ぬのか……あぁ、まだ死にたくないなぁ…


 あぁ、身体が冷たくなっていくのが分かる…腹部から熱い何かが流れ出ていくのが分かった。そして五月蝿いくらいに知らない女の声が頭の中に響き渡っている。


 あれ?…これは私の記憶?走馬灯にしては、こんな記憶に覚えは無い。


 ぼんやりと写った視界から女性の姿が見える。知っている…私はこの女を知っている。冷たい金属の異物感と不快な痛みも全部だ。


 そうか、これは私の…──いや、わたしの前世の記憶なのか?


『記憶(私と俺のプロローグ)』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る