4 ホームルーム事件?

子供の頃から、暴力というものを受けることなく育った。



「は、離れろ!!」

大公が弁明しようとしている目の前で、クロアは、王子のほおを殴った。

周囲から悲鳴が響くのも気にせず。

「かっ!」

思ったよりも強く、地面にふっとばされ、血を吐きながらも、驚いていた。

「なぜ?」

王子の問いかけにクロアは心底嫌悪したような目で見下ろした。

初めて受けた、暴力という魔物は非常につよかった。

「気持ち悪いんだよ!イケメン面して、ヒーローみたいに来て。」



「はあ?あん時行った通り、俺はお前が嫌いだと言った!今さら好きなタイプになっても変わらねーんだよ!」

そう言って突き放そうとするクロアに王子ヴィランは興味を持ち、なおも詰め寄る。

「では魔王的なキャラが好きなのか?」

「なんでそうなるんだよ!?てか何でそんなに知りたがろうとすんだよ!他に女なんているじゃねーか!」

「二人とも!静かに!!誰が大声でケンカしろと言った!?」

熱が入ったせいでつい立ち上がっていたクロアは気づいて、気まずそうに席についた。

「君が初めてをくれたからだよ。」

は?俺が初めてをあげた?

頭打ったの?理解できない生物を見るようにクロアは隣に座る王子を見た。




「ったく、なんなんだよあの王子....」

朝のホームルームが終わり、廊下を一人歩き、クロアは舌打ちをした。

初めて殴られたから興味を持った。意味が分からない。誰だって今までの間に殴られることはあるだろ。

「だいたいあのクソ王子いけすかねーんだよ。あんな顔したって所詮人だろ。」

ふと頭に思い浮かぶ。

前世の頃の記憶が。

モデルガンが金槌で粉々に壊される。

暴言を吐き、怒鳴り散らす母。

無言で責め立てる父。

「あーくっそ。」

慌てて首を振り、その記憶を消す。

もうアイツらはここにはいない。

今更思い出したって......

「あの。」

ん?声の主に聞き覚えがあり、クロアがそちらに目を向ける。

そこにはいつかの美少女が小刻みに震えながらもまっすぐにクロアを見つめていた。






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転生先の時代を塗り替えたいと思います 牙崎鈴 @akihiro1306

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