決めつけギルティー
辺りを見渡すとたくさんの人がござる。
もうサービス開始から約1時間半も経っているのだからもしやリス地はガラガラでござるのでは?
と期待してござったのだが、流石にガラガラはなかったでござる。
とはいえ常識的な人数でござるからして、普通に歩けるのは幸いでござる。
「ふむ…、見た感じ初期装備はどの職業も全員共通のようでござるな」
種類はあれど同じ服を着ている人が圧倒的に多いいことに気づいた拙者は自分の着ている服を確認するでござる。
拙者の服は他の人間と同じレザーベスト…ではなく、若干鉄が混じった皮装備にマントが付属してござる。
周りを見るにNPC特典でござろう。
皆が一斉に服を変えた可能性もゼロではござらんが…
拙者は自身の服を確認し、次はやることを決めるでござる。
(チュートリアルみたいなのがあれば嬉しいのでござるが…)
チュートリアルは無いのでござろうか?そう思っているとどう言う訳か拙者の目の前にウィンドウが現れた。
『【Tips】チュートリアル時は個別空間に移動します、目立ちたくないの願望の持ち主ならば路地裏等、人目につかない場所ではいボタンを押すことを推奨します。
チュートリアル空間に移動しますか?
はい いいえ』
正直拙者は目立つ目立たないはどちらでも良かったでござる。
が!折角NPCプレイが出来るでござるからして、なるべくバレぬようにする方針で行くでござる。
心の中で方針を決め、路地裏に向かうでござる…。
(つけられてるでござるなぁ)
足運び的に現地人ではなく、拙者と同じ初心者でござろう。
これで俺が…とか、これランダムクエだよな?自慢しとこ、等聞こえるでござる。
こやつ、致命的に尾行がなってないでござるな。
拙者はつけていたプレイヤーがウィンドウに注意を向けた瞬間走り、プレイヤーを撒くことに成功するでござる。
そうして路地裏へ行き、ウィンドウのはいを押すでござる。
すると視界が暗転する。
明るくなった瞬間後ろに気配を感じた。
咄嗟に腰を落とし、前方へ体を捻りながら跳び、相手を視界にいれる。
気配の原因を目視するとスキンヘッドの大剣を振り下ろしているオッサンがいたでござる。
「危なかったでござるよ、まさか奇襲を食らうとは!随分派手な挨拶でござるな!して、某は何奴でござるか!」
素直に答えてくれると楽でござるが…、と思いながら言葉を連ねながら、腰に刺さっている短剣を抜き、スキンヘッドの男に殺意をぶつける。
「おーおー、俺か?俺はただ力が強いだけの冒険者だが、そっちは随分良いもんもってんじゃねぇか、完璧に背後取ったと思ったんだけどなぁ…
殺し屋にしておくのがもったいない位だぜ?」
冒険者でござるか…拙者はまだ来たばっか、故に指名手配されるようなことはしていないし出来ないでござる。
しかも拙者は暗殺者ではない、つまりこれは人違いってやつでござるな!
拙者は短剣を腰に戻し両手を上げる、スキンヘッド殿は此方が何をするのかと警戒心がだだ漏れでござる。
「拙者はその暗殺者とは無関係でござるよ、拙者は今から冒険者組合へ行く身、よければ通してもらえんでござろうか?」
拙者は無害と伝えたつもりでござるが、スキンヘッド殿はさらに警戒心を強めてござる。
「はっはっはっ!本当にそうなら一直線に行ってるはずだろ、違うか?路地裏にいるような奴が、今から冒険者組合へ行くので見逃して下さいってのは虫がよすぎるんじゃねぇの、か!」
言い終える直前に此方に一瞬で近付き大剣を振り下ろしてきてござる。
それを躱し首もとに蹴りを入れる、が成果は無しでござる。
スキンヘッド殿の先の言葉、全くもってその通りでござる。
拙者はNPCのロールプレイをする故、自分の身を明らかにする行為は無しでござる。
逃げるのは速度も地の利も負けている時点で論外でござる。
となるとこの男を気絶させ、本当に冒険者組合に行き、疑惑を晴らす。これしかないのではござろうか?
「いささかその通りでござるが、表通りは今少々歩きづらい空気が出ておるが故、路地裏に避難したら迷ってしまったのでござるよ」
嘘は言っていないでござる、NPCが歩きづらい空気が出てるのも、路地裏に避難したのも、今迷っているのも、全て本当の事でござる。
しかし迷っているのは道ではなく、倒しかたにでござるが。
「はっ!そりゃあ1日であんだけの異邦人達が来たんだ!歩きづれぇのも無理はねぇ、だがよ、そんなの随分前から予言されてたされてた事じゃねぇか!それで今さら知りませんでしたっつーわれても信用できるかよ!」
ふむ、それはまずったでござるな、予言されてたならば先程の言葉は火に油でござったな。
敵は左側から右側へ、右下から左斜め上にそして最後に縦に振り下ろし蹴りをいれてきた、拙者は蹴りのタイミングで懐に入り顎に蹴りをいれる。
見事クリーンヒットしたはずでござるが、何故かピンピンでござる。
窒息は現実的じゃない、顎もダメとなったらいよいよどう気絶させるのか、後は脳震盪位しか思い付かぬでござるが…これ無理だったら結構詰みでござるな。
「某、本当に人間でござるか?」
「あぁ?それは俺が化け物とでも言いてぇのか?
さっきから人様の急所ばっか狙いやがって、暗殺者じゃないって豪語しときながらやってることは暗殺者じゃねぇか!てめぇ隠す気あんのか?」
気絶させるためとはいえ流石にあからさますぎたでござるな。
とはいえここで隠していては普通に負けるでござるからして。
「疾!」
今度は拙者から仕掛ける、リスクが高いでござるが拙者の後ろももう壁でござる。
故に、この一回に全てをかけるしかないでござる。
スキンヘッド殿の目の前に縮地し腹に発勁を放つ。
スキンヘッド殿は衝撃後すぐに大剣を横に振るう。
だが発勁は衝撃を体内に押し付ける技、その際筋肉などが一瞬固まる。
いわゆるラグの間に壁を使い相手の背後に移動。
着地と同時にしゃがむ、瞬間大剣が拙者の頭上を通る。
そこで足払いをするもびくともしなかった故、
すぐに足を引っ込めると共に立ち上がる。
大剣を振り下ろしている所に、左手で大剣の側面を左に押し込む様にして重心をずらして頭に発勁を放つ。
そしてスキンヘッド殿の頭を使い、後ろへと回り2回目の発勁するぞ、と何時でも回避出来るようにしつつ頭に手を添える。
「あ゛ぁ゛~!気持ちわりぃ~、はっ、先ほど人間か聞いてきた割に、お前も十分化け物だなぁ?」
スキンヘッド殿が話している間に3人目の気配が近付いて来てるでござるな。
拙者は頭から手を離し、太ももの横ぐらいのところで左によれ、と合図を出す。
「あ?あぁ」
そこでスキンヘッド殿も気付いたようで左に移動したその瞬間に短剣を投げる。
3人目の気配は一瞬驚いたが拙者の投げた短剣を弾く、がスキンヘッド殿の大剣が首を捉え血飛沫を上げる。
そして数分後、拙者とスキンヘッド殿はお互い気まずそうに見つめ、スキンヘッド殿が口を開く。
「…人違いだったようだ、すまん」
誤解は完全に解けたでござる。
何故なら今倒した相手こそスキンヘッド殿が探していた暗殺者のようでござった。
取り合えず足取りや気配遮断の技術からして暗殺者なのは確定していたでござるが、
身元を確認するため暗殺者がもっていたバックを調べると高そうな懐中時計が出てきたのでござる。
それがなんと依頼を出した貴族が娘に買ったもので、娘は殺された隙に奪われたそうでござる。
その懐中時計は奪われた貴族の娘さんも大層気に入っていたらしく、取り返してくれ!と指名依頼があったそうでござる。
貴族の依頼な上にその奪われた娘からも頭を下げられては無茶だろ、と思いつつも受けるしかなかったそうでござる。
…なんかおかしなところなかったでござるか?え?スキンヘッド殿の話だと娘さん生きていることになるでござろう?…え?
「娘さんは死んだのでござろう?霊体でござろうか?」
「…は?お前、まさか一回も死んだこと無いのか?」
「…?まぁ、まだ一回も死んでないでござるが」
そんなまじで?と言うような顔で言われたとて、
拙者はこの世界に来て数時間程度でござる故、死ぬ要素などないでござろう。
…今さっき死にかけたでござるが。
「くくくっ、ははははは!こりゃあ傑作だ!
まさか俺らの側で一回も死んだことがない奴がいるとはなぁ!
先程の詫びも兼ねて今日は奢らせてくれよ!
さてと、飯の前に自己紹介だな!俺の名前はブルーク、こう見えて特位の冒険者なんだぜ?」
特位、1位から7位の階位制度の冒険者にて最上の位でござったな…。
つまり、先程の戦いは拙者が黒と確定してない故に手加減してくれたのでござろうか?
…いや、懐中時計と町を壊さない程度の実力で相手をしてくれていたのでござろう、誠に助かったでござる。
「拙者の名前はヨソク、今はただの無職でござるが、今から冒険者になりに行くところでござる」
「そういや冒険者組合に行くとか行ってたな、あれってまじだったのかよ、ならさっさと済ましちまおうぜ、それ終わったら飯だ飯ぃ!」
思わぬことが起きたでござるが、最終的に誤解は解けたようでよかったでござる。
_____________________
【あとがき】
自分鈍感系主人公より敏感系主人公の方が好きなんですよねぇ、
だからあの100人の彼女ができる作品の主人公はすごい好きです。
なんかすげぇぶっとんでる漫画だと思いますがそう言うのが嫌いじゃない人は面白かったのでオススメします。
ここが見やすかった、見にくかった等があれば指摘してくれるとうれしいです。
それでは次回の話も楽しんでいただけることを願います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます