その9、燃える家

気がつくと、目の前で家がごうごうと燃えていた。

熱い、熱風で息が詰まる。

思い出がつまった、俺が生まれ育った実家。

それが今、目の前で燃えている。

見上げると、火の粉が夜空に消えていった。


俺は今、無性に頭にきている。

何故なのか、俺自身も分からない。

訳がわからないが、俺は体が震えるほどの怒りを覚えていた。

燃えちまえ、こんな家。

死んでしまえ、みんな、残らず。


足元には、使い終わり空になったガソリン携帯缶が転がっている。

そしてもう一つ、満タンに中身が入った携帯缶がある。

あとは、これをかぶるだけだ。

今際には走馬灯が走るなんていうが、嫌になる思い出しか蘇らない。


眼の前で、あの女が笑っている。

幸せそうな顔をしている。

良かった、喜んでくれたんだ。

ありがとう、そう聞こえた。

なぜだろう、なぜ俺は今こんなことをやっているんだろう。

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