薬売りの魔女リ・メティカの人生

仲仁へび(旧:離久)

薬売りの魔女リ・メティカの人生



 あるところに薬売りの魔女がいた。

 その魔女の名前はリ・メティカ。


 魔女は世界中の人々から忌み嫌われる存在。

 だからリメティカは、森の中の小屋でひっそりと暮らしながら、たまに小さな村に行き、自らが調合した薬を売って生活していた。


 リメティカは、破滅の魔女に育てられた子供だ。

 破滅の魔女は、世界中に、魔物をばらまいたといわれる、張本人。


 破滅の魔女がなぜそんなことをしたのかは、誰も知らない。

 愛も、絆も、痛みも悲しみも知っているけれど、なぜかそんな暴挙に出た魔女として語られている。


 そんな破滅の魔女が生み出した魔物は、人々を食らう存在で、和解も理解もありえない生命体だ。

 だから、魔女という存在は忌み嫌われるしかない。


 同じ魔女であるリメティカに、人に対する敵対心や憎悪がなくとも。





 そんなリメティカはある日、細々とした道の隅に子供が捨てられているのを見つける。


 魔法で作った薬が、多く売れた日の夕方の事だった。


 珍しい難病におかされていたその子供は、リメティカの薬でしか治せない。


 そのためリメティカは、孤児院などに託すのではなく、自らの手で子供を育てることにした。


 必要としている薬は高価で珍しく、一般市民では手に入れるのが難しかったためだ。


 慣れない育児に四苦八苦するリメティカだが、その日々は楽しく、人の温かさを知った。


 しかし、穏やかな日常は終わりを告げる。





 ある日、少しだけ成長した子供たちはリメティカを喜ばせようと思い、珍しい薬草をとるために外に出た。


 彼らは、森の奥深くヘ進んでいく。


 その場所で、薬を見つけたが、凶悪な魔物へ襲われてしまう。


 子供たちがいなくなったことに気が付いたリメティカは、すぐに森の中へ。


 助けに入ったリメティカは魔女の力を使って、魔物を倒した。


 しかしその後、子供たちの前から姿を消してしまう。


 それは、ほかの人たちと暮らす未来を彼らに残すためだ。


 リメティカがいなくなる事で起こる不都合は少ない。


 子供たちの病はすでに治っており、自分がいなくても生きていけるだけの知識を身に着けさせた後だったからだ。


 けれども、子供にとって母親の存在は大きいもの。


 リメティカが消えた後、子供たちは悲しみに包まれた。




 家族として母親を愛していた彼らは、リメティカを探す旅に出ることを決めた。


 数年後。


 力をつけた彼らは各地を歩き、リメティカの情報を集めた。


 東の果てから西の果て。


 北の果てや南の果てまで。


 様々な土地を巡った。


 そして、人のいない辺境にどりついた時、彼らはリメティカと再会する。





 以前と同じように人のいない地域で小屋を建てていたリメティカは、薬を売って細々と暮らしていた。


 しかし、健康状態はよくなく、彼女は痩せ細っていた。


 子供たちはリメティカに向けて、今度こそずっと一緒にいようといった。


 自分たちにとってリメティカは魔女などではなく、大切な家族なのだからと。


 リメティカは嬉しく思ったが、友に住むことはできないと告げる。


 リメティカが魔女である事がうすうすばれはじめ、もうじきこの場所も去らなければならないからだ。


 この逃避行は、おそらくリメティカが死ぬまで続く。


 そんな人生に子供たちを巻き込むことなどできなかったのだ。


 リメティカは子供たちを不幸にしたくはなかった。



 


 けれど、子供たちはリメティカのそばにいることを選んだ。


 たとえこの先どれだけの苦難が待ち構えていようとも。


 家族が一緒にいられるのならどんな事も不幸なのではないのだと。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

薬売りの魔女リ・メティカの人生 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ