第一章 始まりの物語

第13話 全ての起点

「お前は”センダ・クロスティの黒箱”について何か知らないか?」

俺はきょとんとしてしまった。


「名前だけなら。でも詳しいことは知らないんです。」

おれは正直に話した。

するとクランクの顔が少し緩んだように見えた。

別に今までが強張っているように見えていたわけではないが...


「俺のことを知らないのはまだしも”黒箱”のことも知らないとは...お前、名前は?」


「タ、タクミです。」


「タクミっていうのか?ならタクミ、この俺が黒箱について少しばかり説明してやるよ。」


「は、はい...」

俺はとりあえず彼の説明を聞いてみることにした。


「センダ・クロスティ。世界を動かすために天から降り注いだ”原初の光”。この世界ではそう呼んでいる。そして黒箱ってのは、原初の光を封じ込めた物だ。ここまでは大丈夫か?」


「はい。まだ理解できます。続けても大丈夫ですよ。」


俺の返事を聞いて彼は小さくうなずいて話し始める。


「ただ誤解しないでほしい。光を閉じ込めただけのアクセサリーのような箱じゃないってことをな。」

「あれは”原初の光という力そのもの”を封入した”人体強化装置”だ。ちょうどこんな感じの奴だ。」

彼は護衛に”アレを出せ”と指示をして、一枚の紙を俺に見せた。


紙には文字通りの黒い箱が書かれていた。ただ模様が記されていた。

赤い太い線と細い線が全体をくまなく駆け巡っている。

これが黒箱の正体って奴か。


「そう、これが黒箱だ。タクミも長く生きていたいんだったら黒箱なんて見ても直接触るんじゃねーぞ?下手すると死ぬって噂も出回ってるぜ」


し、死ぬ?!そうなの!ヤバいじゃん。


「わ、分かりました。見かけたら冒険者協会に報告すればいいですか?」


「あぁ、そうしてくれ。」


彼は”じゃあ今日はこれで失礼する”、”気をつけろよ”と言って護衛と一緒に隣の部屋に住んでいるであろう住民に同じような話をしに向かった。


「びっくりした....」

今振り返ると、あの人クランマスターなんだよな。こっちに来てまだ浅いけど、すごい人に出会ったな。


「明日アルカに話すか。」


俺は少し疲れたような気がして素直に妹に抱き着いてすぐに意識を失った。

______________________________________



「……ミー?起きてー!」

誰かのこれが聞こえる。

身体も揺さぶられているようだ。

まだ重い瞼をゆっくり開けると、かわいい俺の妹がベッドに乗って俺を揺さぶっていた。


「あーフレイか。どうしたんだ?」


妹ははぁーとため息をしてから口を開けた。

「晩御飯の時間だよ。ちゃんと食べて明日からの修行に備えなきゃ!」

あーそういうこと。っていうかそんな時間?

外を見ると空はすっかり暗くなって、町明かりだけがきれいに見えた。


「そうかそうか。悪かったよ。じゃあ今から食べるか」

「うん!」


テーブルにはいつ習得したのかわからないあの日店で食べた”ストロンイノトゥペルのオーガニック焼き”が二人分並べられていた。


「お前、これいつ作れるようになったんだ?」

そう聞くと妹は不思議そうに答えた。


「うん?ついさっきだよ。曖昧な記憶を頼りに作ったけど...」

妹は一口食べて

「うん、意外と出来るもんだね!」

妹は渾身の笑顔を俺に撃ってきた。


まぶしい


「どれどれ...」

妹が自信をもって言うもんだから期待してしまうんだが...

「おぉ...うめぇ」


確かにうまい。店と比べると少しソースのパンチが弱まっている気はするがそれでもおいしい。

ここに白米があればと思ってしまう。

それは強欲って奴か?


俺たちはしっかり料理を味わって台所で仲良く片付けをしてから妹だけ先に寝てしまった。

まぁ、妹は寝る前に「おやすみ、大好きなお兄ちゃん」と言ってくれたのでうれしくてたまらないが。


俺はまた椅子に座って外を眺めている。

ただ明るすぎない街中が見ていてうっとりする。

心が休まる。

ただ、それだけ。


そうやって眺めるだけ。



もう一時間も眺めていたのかな?

「さすがに寝るか...」


ゆっくりと立ち上がったところでふと視界の端に何かが映った。

反射的に気になって窓の先にあるものを見ようとしたとき、バコンっという鈍い音とともに黒い物体がぶつかってきた。


一瞬妹のほうを見たが起きる気配はない。

今ので起きないのか...


俺はそっと窓に近づいて開けるとそこには鳥がいた。

黒い鳥が窓にぶつかってきたのだ。


「なんだただの鳥か...」


そう一安心しているとすぐにバサバサと音を立ててどこかへ飛び去ってしまった。


だが、窓枠に手のひらサイズの何かが取り残されていた。

「なんだこれ」

手に取ってみると”白いキューブ状”の物体で黄色の”幾何学模様”が記された、本当に見たこともない物体だった。


「こんなよくわからない物、鳥が持ってることもあるんだな。不思議だな。」

俺はそれ以上考えることもせずにズボンのポケットにしまって、窓を閉めてからベットに横になった。


「おやすみ。大好きな妹」


俺は静かに今日に別れを告げた。

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女性騎士に守られるのは嫌ですか? 澄豚 @Daikonnorosi

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