第12話 疲労の報酬
俺はあれからアルカの修練を三セット受けた。
最後までやり遂げたが....
「あ”ぁ”!もうむりー!」
俺の筋肉は悲鳴を上げて、体力の尽きた体は自然に地面に倒れ伏した。
隣にいた妹はというと、俺よりも一セット前に限界が来たようで、今も地面に大の字で目をくるくるさせながら倒れている。
そんな俺たちにアルカはしゃがんでこう言った。
「二人とも”頑張ったね”!」
「あ、あぁ...見ての通りさ。異世界人の割にはついていけてただろ?」
アルカに声を掛けられて少しだけ体の疲れが取れた...気がする。
「アルカの修練厳しいって!何とかならないのー?タクミからも何か言ってよー!」
今にも泣きそうな俺の妹兼精霊は俺に言葉の”救助ロープ”を投げてきた。
実際アルカの修練は防御術だけだったとはいえ、かなりキツかった。
それを考えるとアルカに意見を出すのもアリかと思った。
「なぁアルカ、この修練もう少し簡単に...楽にならないか?」
喋るだけで肺がつぶれそうだ。
しっかり深呼吸しながらアルカの答えを聞く。
「簡単?楽に?ダメ、ダーメ!そんなこと言ってたらこの世界じゃ生きていけないよー?」
「いい?この世界には魔獣や幻影獣よりも手ごわい奴はいくらでもいるの。私たち
彼女は、まだ言葉を続ける。
「一部の”妖精族”は私たち
「「マジか」」
まさかここで妹と反応が被るとは思わなかったが....いや、この世界ってかなりヤバいんじゃないか?今更だけど。
「だから」
「二人には私のきつーい訓練を受けてもらってるの。分かった?」
アルカは俺たちにそれを理解してもらいたっかったようだ。二人で分かったと返事をすると、明日のことについて話し始めた。
「じゃあ、明日のことについて話すね?」
「明日もこの練習か?」
「えー!明日もこれとか嫌だ嫌だ!」
アルカは妹の反応にはあははと笑って、話をつづけた。
「今日の二人を見て私は思ったんだ。防御の練習は今日限りで終了!」
俺たちはそれを聞いて安心するどころか、逆に何をさせられるのか気になった。
「え、じゃあ明日は何をするんだ?」
少し間を開けてアルカは口を開ける。
「明日からは本格的に”剣術”を教えていくよ。正直、剣なんて握ったことないキミたちは楽しみで仕方ないだろ?」
アルカは少しにやりとした顔を向ける。
なんだよその顔。
でも...
「そっか。やっと剣を振れるのかー!」
やっぱりうれしい。剣を振って敵を倒せるような剣士...?冒険者...?になって自給自足の生活をしてみたいな。
「そ の か わ り !」
急に声を大きくしてアルカは条件を突きつける。
「剣を振る相手はあそこに立っている案山子じゃない。この”私”だ!」
え?
「えー!アルカに向かって剣を振るのー?アルカが危ないじゃん!」
アルカは妹に近づいてこういった。
「大精霊様は私のことをなめていらっしゃるのですかー?」
妹の両頬をやさしくつまみまわしながら言うと妹はすぐにだってーと言った。
それにアルカは優しく言う。
「いい?こんなバカな私だけど、冒険者として、騎士としての強さへの自覚はちゃんとあるのよ?それに、止まった獲物を相手にしても上達しないわ。」
「剣を扱うなら、動いている標的に対して練習しなきゃ。ね?」
そうだ。
確かにそうだ。
元の世界でもそうだ。
いくら座学で理解していたとしても、じゃあ本番で座学通りのことを出来るかと言えば、そうじゃない。
学んだことを生かせるように実地に出て練習を重ねて、できるようにしていくんだ。
アルカが言ったことはそのことだ。
「アルカの言うとおりだ。だからフレイ、明日からはアルカに追いつけるように頑張るぞ!」
俺は妹にグッドサインをすると妹は横になりながらも顔を俺に向けてグッドサインを返した。
かわいい妹だ。
そうして今日の修練が終わった。
俺たちはアルカに家まで送り届けてもらい、二人でベットの上で横たわった。
「お兄ちゃん...」
「...なんだ?」
「私、剣より魔法がいい」
「文句言うな。それかアルカに魔法も一緒に教えてもらったらどうだ?」
妹は軽くうなずいた。
「それは大アリかも。明日聞いてみよっ」
「そうするといいさ。」
俺はとりあえずベッドから立ち上がりシャワーを始めた。
「.....本格的に異世界ライフが始まったかー。俺はこの先どうなるんだ...?」
労働災害で死んで、転生して、その場ですぐ真っ二つ。蘇生されて、国をちょっと案内してもらって....ここ短い間でいろんなことを経験したな。
「意外と、生きていけるのかも...?」
俺は一人でくだらないことを考えながら気持ちよくシャワーを終えた。
「おーい、シャワー終わったから次...って」
ベッドに目を向けると妹はぐっすり寝ていた。
俺は自然に体を動かして冷えないように毛布を掛けた。
「がんばったな」
そんな短い言葉をかけるとなぜか幸せそうに見えた。
俺は気のせいかと思って近くの椅子に座った。
足を組んでリラックスだ。
窓の外を見ると世界はまだ明るかった。
感覚的には15時くらいだろうか。
帰ってくる途中でアルカと三人で昼飯を食べた。
それから一時間ほど道を歩き続けたのに世界はまだ働けという。
嫌だ。今日は疲れた。休ませろ。
俺はそう思いながら街中を眺め続けた。
......
...ん?
いきなり俺たちの部屋の扉をノックする音が聞こえた。
そのあと男の声が聞こえてきた。
なんだろう、少し厳つそうな感じだ。
「いまいきまーす」と俺は一声かけてたったったと向かって扉を開けた。
するとそこにはこの間出会った義手の男性とは似つかない肌の焼けた大男に、護衛らしき人間が二人ほどいた。
もちろん俺は彼らが誰なのかは知らない。
だから俺は最初にこう聞いた。
「あのーどちら様で?」と。
すると大男が口を開いた。
「もしかして俺を知らないのか?珍しい奴もいるもんだな。」
「俺はクランク。クランク・フルトンだ。この国で”クランクの
クランクはそう言って右手を差し出し握手を求めてきた。
俺は素直にクランクと握手をした。
最初に思った感じと違う。
もっと怖い人かと思ったけど、結構フランクな人みたいだ。
「突然な訪問でこんなことを聞くのは失礼かもしれんが....」
「お前は”センダ・クロスティの黒箱”について何か知らないか?」
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