第28話『三人の歌手』
『ブラボーも無し』
その歌手が歌い終わると
沈黙があった
ブラボーも無し
拍手も歓声も無し
観客は座ったまま
スタンディングオベーションも無し
彼女の歌声が沈黙を作り
空間を覆っていた
歌手が深々と礼をしてステージから去ろうとしたとき
観客から、まばらな拍手が起き
やっと気づいた観客が大歓声を始めたころには
歌手は、もう、ステージから消えていた
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『サバンナまで届いた』
自由奔放な精神で
その人は歌い出す
周囲を振るえさせ
常識をおののかせる
開放された歌声に
開放されたスタイル
大人は目をしかめた
自由奔放な精神が歌いだす
大人は耳を塞ぎ
ドアを出た
開放された歌声は
海を遥かに超え、サバンナまで届いた
ヒョウが耳をそばだてた
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『天才歌手』
100年にひとり、という天才歌手がいた
心臓を絞り出すように声を出す
マイク無しで、ホール全体に声を届ける
フォルテでもピアノでも
魂を破裂させるように声を出して歌う
誰もが、一度は聴きたいと思っている
問題は、その歌手に見合った歌詞があるかどうか
歌手に手玉にとられる可能性がある
手玉に取られるなら、まだしも、歌手の視界にも入れない歌詞が数多ある
歌手に耐えられる歌詞が無い
そのための詩があるのか
それに見合うだけの詩があるのか
100年にひとり、という天才歌手が
待っていた
その詩を
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