第8話 グリフォン

 教室で活発な討論が行われている。

「それは違うと思います」

「その意見は納得できません」…

クラスの中で議論が続く、東京の学校に来て、決め事の際の討議風景だ。

延々と続く討議、贔屓、利害等の様々な思惑の戦い、そして最後は数だ。

結果が否決で目が覚めた、一番まともな龍司の意見が数で潰された。

 東京に来た頃、進学した学校で、龍司は東北田舎からのお上りさんだ。

高等学校に入りクラス分けされた時、当然知り合いは無い

同じ中学校出身、同じ塾、同じ地区等の派閥も無い、

思惑、贔屓、阿り等とも無縁、

それで「よそ者」と言うだけでのこの仕打ちにあう。


 朝からむかつく夢を見たが、そのお陰で友人を得た翔子、恭平と言う。

二人共、東京出身だが少数派、多数派はやはり地元中学の出身者が多い、

夢の中の否決組がこの地元連中である、只の自己優示欲の結果で、

何れ結果的に不興を買う事になるのだが…。

 三人の共通は環境と志向、程度の差は有るが親が経営者で裕福、

資産も地位も有るが、後継ぎでなく、学歴で地位を狙う立場でも無い、

気楽な立ち位置であり、あくせくを嫌い進学レベルを落としている。

最後にこの歳で、そんな判断をする事自体、ただの怠け者か、

ただ物ではないのか判断の付かない器でもある。

翔子は商社のお嬢様だし、恭平は親が政治家だ。

アイツらに会いたいな、夢の余韻を打ち消すように思考を変える。

ーーー

 山都では、巷で「闇一族」と呼ばれる人達が多く住む。

公にはされていないが、身体的な特徴と、超能力を持っ人が多い

明治以前は全国に分散していたが、明治政府以後、戸籍移動が自由になり、

さらに戦後、検診が一般化して、身体的特徴で不快な思いをする事に成り、

嫌な思いをしなくて良いようにと動いた者達が居た。

同じ特徴を持つ者を医者にして、診断書上は秘匿した

そんな先見の明を持つ者達の元に、仲間内の誘いや、噂で、何時の間にかここ山都に

自然に同類が集まったと言う状況である。


 人には隠し遺伝子が有り、覚醒時に超能力、身体奇形が現れる、

身体的には心臓の空心室とでも呼ぶべき第三の心室、脳下垂体肥大、

頭部の角、耳の長耳化等の奇形等腫瘍と見られるものであり一般的で無い。

これ等は能力の発生源でスキルを司のだが現代医療では病気と見做される。

覚醒してスキルを得る後天的な場合は顕著で「手術をと宣告される」

それらの場合覚醒時の病的な症状を伴うせいである。


 人口の増加で、大まかには阿賀川北の山都の地区、

阿賀川南を只見川で東西に分割して東の山都三津合、

西の高郷川井と川の流れでT 字分割した地域に拡大移住した。

 各地域には纏め役を置き、総纏め役に闇家、山都は御黒家、

山都三津合に会津家、高郷川井は羽神家とした。

 一族は闇御津羽神(くらみつは)様を奉る。

三津合河原田の神社を氏神とし神官を一族より募り崇拝する、 

闇家は龍族の血を引く者であり、長男以外は婚姻時、三家の名に改名する

重要な神事は年に一度、日にちも内容も秘匿される変則神事、

それでも、毎年実行されるが故に、超能力神事、神懸かり神事と言われる様に、

氏子が夢のお告げを受けるとの事、その日、族長の後継ぎの出席は必須


ーーー

 昨夜はリチャードが騒がしかった。

質問が機関銃の玉の様に次々に飛び出し閉口したのが、今朝の夢に

成ったのではと思うぐらい、嬉々として話を聞いてきた。

 カメラON

 『確か剣のクロスが冒険者ギルドのマークだった筈ですが、

逆様クロスは何のマークでしょうか?、等と馬鹿な思考をしたら

目の前に、それが有るではないか、ギルド看板が落ちて逆様に。

落ちた原因は…、周りを見回すといた、高い位置にサルが数匹…


 ドアが勢いよく開けられ看板がぶっ飛ぶ、僕の足元までそれは来た。

人が出てきた、こっちを見たと思ったら目の前に拳が有り、あまりに突然すぎて、

加減が出来ず払い除け、浮いた顎に反撃のアッパーを勢いよく叩き込んでしまう。

その勢いの強さで吹き飛び、出てきたドアを壊して吸い込まれた。


 ドアの破れる音が響き、恐る恐る顔を覗かせ様子見の後、

ゾロゾロ人が現れ周囲を見回す、落ちた看板、その近くに居る僕、

ヒソヒソ「あいつか?」「まさか」「あの喧嘩屋が伸びてんだぞ」ざわつきだした。

 食べ物を売っているおつちゃんが「落としたのは、あいつら」

と悪さを続けているサルどもを指さす。

「アランもか?」「それはこの坊主」こちらに指が向いた。

「どうやって?」「飛び出して…顎に…ぶち破り…」身振り手振りで

人垣とおっちゃんでやり取り、その隙にサルもどきがおっちゃんの店に、

「パタ」「パタ」「オ~~オ~~」声と皆の視線に気づき振り返る店主

倒れた猿を見て「兄ちゃんありがと、助かった」

「こっちも証言が無きゃメンドイ事に…」

壊れたドアの前で様子を見ていた逞しい中年「話が聞きたい来てくれ」手招き、

僕が自分を指さすと、頷かれた「親父さんにも後で聞きに行く」

「あいよ、あんなスゴイ反撃、いくらでも話すぜ、ハハハ」

歩き出すと、「ちゃんと話しとく、そのサルどももギルドに売れる持ってけ」

全て拾って投げ渡された。

 カメラOFF


・・・

 「ギルド長のカーソンだ、手長モモンガザルを素手で捕まえられる

そんな奴はまず居ない、アランの件も奴の早とちりだろう、で、

只者じゃないお前さんに聞くが、何者だい?」

「答える前に聞くけど、ギルドって守秘義務あるよね?」「ああ、ある」

「信頼には値しないけど、まいいか、も一つドナウドと仲いいか?」

眉を顰める「司教の三世か?、聞いて如何する」

「告げ口が行くかなと」更にしかめ「アイツは昔から嫌いだ、

街で暮らしてるから知ってるが告げ口とは?」

「そいつの絡んだ最近の出来事は?」

「まさか、罰当たり召喚か?」

ほう、罰当たりですか「巻き込まれたと言ったら信じるか?」

「そんなほら話、信じられんが、普通、ほら話ならもっと真面な話にする

もっともな作り話をな」

「ダービットを知ってます?」

「知ってるさ幼馴染だ」

「勇者って強いのか?」

「現在はベテラン騎士と張り合える程」

「お前は強いか?」

「アランとやらを伸したから弱くは無い筈、幼馴染に僕の事聞けばいい」

「決めた、俺の野生の感が叫ぶ、お前グリフォン狩って来いこい」

「とか言いつつ厄介払いか」肩を竦める。

「A級は貴族扱い、三世も手が出せん、ギルドとして神殿と対抗できる、

それにB級のアランの攻撃をかわし一発で気絶させる等確実に強い」

「グリフォン殺すのはな~、嫌だな」

「神獣とも言われるし、勝つ自信は無いか」確かめる様に顔を覗いてくる

「殺すのが忍びない、ペットではダメか?」

「ペットとは生きて掴まえるてか?」目を丸くし「出来たら即Aをやる」

話は決まり、場所の地図ももらった。


ーーー

 カメラON

 海原を飛んでいる、空も海も蒼い。

地平線に頂が見えて、もう、かなりの時間が過ぎたが、全容はまだだ。

中国絵画の須弥山じゃ在るまいし、電柱の様な丸い山がポツンと在る

海が暖かいお陰で雪の帽子は被らなさげだが、途中にある大きな穴が

グリフォンの巣だろう、飛べて鳥では無いし、馬の親戚なら草原を

走り回るイメージだったので、獅子と鷹とは予想を見事に裏切られた。


 近づくと洞窟の前はテラスの様になっていて、そこに降りれる様だ。

洞窟の入り口でお待ちかねだ、獅子の胴体にワシの頭と翼のある幻獣との事

「あんたさ、待ってたんだから早く来な」いきなりのお言葉ですが

「待つ、早くとか、アポ無し初対面ですよね、僕たち」焦ってしまう

「わたしってさ見えるのよ、自分の未来がね、で、あんたと一緒だと、

楽出来て、面白可笑しくいけちゃうのよ、早くティムしなさいよ」

「仲間でいいの?」

「違う、ティムよ、絆程度じゃ無く魂が繋がるの」

「何故そこまで?」

「魂が繋がれば、お互いの力使い放題でしょ」

「そうなの?」

「頼りない子ね、私のご主人様に成るんでしょう」

めんどくさいのと関わった、いまさらなー躊躇する

「さっさと儀式やって頂戴」

「僕と魂の契りを結ぶか」

「結ぶわよ、これでアンタが生きてる間安泰」

「名前は受里、ジュリでいいかい」

[よろしくね][ティムされました]

「ドラゴン達から貢物、貰ったでしょ?」

「鱗とか光物の事?」

「そそ、私もあげるわよこの山硬いのよ、頂上付近は金剛石よ、

そこの上辺りは魔法金属、ミスリルとか言う奴で、この下辺りは金ね、

好きに使いなさい、ただ山を崩さない事。

あ、宝石等光物は隣の部屋ね、持ってって良いわよ、好みのイメージは、ふむ」

目の前で人化していき「どうよ」と聞かれても…

凛とアーシアの中間位のどっちでもない可愛い子がいた。

「チョット、何よ、いきなり手とか服触って、段取りとかあるでしょ」

「あッ、人化して、服着てるから」

「脱がせたかった?、私でいい?」

「うん、いやいや違うって」焦ります、この娘のペース

「人の肌と服の手触りを、確かめたかった」

「つまんない、それで?」

「再現完璧です」

「当り前よ、下界、あッと違った、人世界にお忍びで行くもの」

「洞窟の管理はどうするの?」

「使い魔いるし、結界張るわ、乗れば」あまりの展開に成す術がない

戦闘もせず往復のみ、依頼完了なんだけど… 

カメラOFF


 夕方、冒険ギルドにいた。

「まさか、言われた日に行くって、半日であそこ迄往復だあ…

なんて奴だ、規格外過ぎる…、約束通りA級だ、しかし眷属ね~…

その実力なら、うちのギルドの看板を頼むぞ」

「任せなさいよ」

さすがにギルド長も、グリフォンに戻った姿を確認した直後である

突っ込みの強いお局口調が、可愛い娘から出るギャップは…

 

 ギルド証と依頼料を受け取りそのままリノンの家へ寄る

気分も良く、食欲も有る、トイレは自分で行くそうだ、

ビタミン剤が無いし、日にち薬だね。

宿でユーチューヴの編集、投稿できるやら…

寝る前、迂闊にも「イメージで作った服は脱がせれるか?」

考えが読まれてます、ジュリさん怖い、こっちは読めません「なぜ」…


 その夜、編集された書き込みの送信を押した。

「異世界間で届く筈ないか、癖でポチっとやっちゃった」


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