望まれる者

「中学校まで当たり前のように学校に通える」

「文字の読み書きができ、食事に危険がない」

「十分に整ったインフラを享受し、水や電気、インターネットに困らない」

「紛争や内戦が殆ど起こらず、高い安全性が確保されている」



 ……ああ、羨ましい。オマエ達のあらゆるものが羨ましい。


 俺の明日をも知れない人生と違い、明日が当たり前でありながら、求めるものの際限がない。それでいて自らの被害者意識に酔いしれる様が恨めしい、疎ましい。それらが俺達のものであったなら、どれほど。


どれほど。


どれほど、人間であれたろう。


もっと、恋できたろうか。

もっと、愛に生きれたろうか。

もっと、お腹は膨れていたろうか。

もっと、喉は潤っていたろうか。

もっと、知識があったろうか。

もっと、危険を知れたろうか。

もっと、やり方を知っていられたろうか。

もっと、もっと、もっと……

もっと、俺達は生きることは出来たのだろうか。



いや、それでも俺達は生きている。”生きてやる”。


だから、お前のそれは才能に過ぎない。


自惚れるな。自惚れるな。


俺だって。俺だって!


俺だって……




【俺だって。】

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