第17話 氷嬢様と恋敵

文化祭が終わり11月に入った。制服も夏服から冬服に代わるこの季節である。


駿介「主税、今からカラオケ行くんだけどお前もどうよ?」


主税「わりぃ、今日スーパーのタイムセールあって行けないわ。また今度誘ってな。」


主税はそういうと、カバンを持って教室を出て行った。


男子生徒A「タイムセールって・・・・・・おかんかよ。」


駿介「あれでこそ、「主税かーちゃん」だな。」


男子生徒B「なんだそりゃ?」


主税はスーパーに向かうため、学校の下駄箱から靴を取り出し、校門を出るとある女性に声をかけられた。


?「あの、主税くん!」


主税が振り返ると、校門の前で小雪が立っていた。


主税「小雪さん?」


小雪「今から帰るの?もしよかったら途中まで一緒に帰らない?」


主税「あぁ、わりぃ。今日スーパーのタイムセールがあって・・・・・・」


小雪はタイムセールの言葉にびっくりしていたが、


小雪「そうだ!帰りにお母さんにお醤油買ってきてって頼まれたと思い出したんだ!スーパーまでだったらどうかな?」


主税「まぁ・・・・・・それならいいけど。」


小雪「やった。」


本当はおつかいなど頼まれていなかったが、主税と一緒に行きたいがために嘘をついて、スーパーについていくことになった。

スーパーに着いてカートを持った主税は、スマホで時間を見ながら


主税「タイムセールが始まるまで時間あるな・・・・・・先に別のところで買い物済ますか。」


小雪「え?」


主税は慣れた手つきでカートを転がしながら野菜や加工食品。冷凍食品などのコーナーを周っていった。


小雪「すごい・・・・・・どの場所にどの位置に商品があるのか分かっているみたいな。」


主税「毎週行ってるから場所は把握できるよな。」


小雪「勉強はできないですけどね。」


主税「ふっふっふっ・・・・・・実は10月の中間試験全部平均点越えなのだ~!」


小雪「え!?主税くん。頭よかったの?」


主税「まぁ、優秀な家庭教師の教えのおかげかな・・・・・・」


小雪「(え・・・・・・それってもしかして・・・・・・)それって、氷嬢さ・・・・・・)」


主税「げ!もうタイムセール始まってんじゃん!小雪さん。カート近くで待っててくれ!」


小雪「あっ、ちょ!」


主税はカートを小雪に預けて主婦の大群の中に入っていった。


小雪「大丈夫なのかな・・・・・・」


しかし、数秒立たずに主税が戻ってきた。手には発泡トレーを持っていた。


主税「手に入れたぞ!国産牛!」


小雪「これが目的だったの?」


主税「国産肉が安く手に入るってチラシを見て、授業も手に着かないくらい心待ちにしてたんだ!」


小雪「そんなに!?」


主税の目がキラキラした表情に思わずフフッと微笑んだ小雪。


主税「なんだ?おかしいところでもあったのか?」


小雪「ううん。そんな表情もするんだなって思って。」


会計を済ませた二人はスーパーを出ていった。


小雪「(このまま帰るの嫌だな・・・・・・神様・・・・・・もう少し主税くんと一緒にいさせてください・・・・・・)」


帰り道二人で歩いていると曇り空から一つの雫が落ちてきた。


主税「雨?帰りは雲一つない快晴だったのに!?」


小雪「どうしたらいいの!?」


主税「このまま真っすぐ行ったら家だからそこまで走れるか?」


小雪「うん!」


本格的に振り出した雨に打たれながら二人は主税の住むマンションのエントランスに到着した。


主税「(なんだよ急に振り出して、鈴女さんの時も急に振り出したし俺って雨男なのか・・・・・・!?)」


小雪「くしゅん!」


小雪は寒さからくしゃみをした。


主税「とりあえずウチに入って。このままだと風邪ひくぞ。」


小雪「うん。ありがとう・・・・・・」


主税はエレベーターで自分の階のボタンを押した。


主税「(今日ばかりは鈴女さんと鉢合わせないようにしねぇと・・・・・・)」


二人の乗ったエレベーターは階に到着して降りると主税は小雪の腕を掴んで小走りに走り出した。


小雪「っ・・・・・・!?」


小雪は突然、主税に腕を掴まれて自然とドキドキしていた。しかし、主税は隣の部屋が鈴女だとバレないよう家に急いで入れようと手を掴んでいたのだ。主税はドアの前に到着してドアにカギを開けようとカギを取り出そうとしたら・・・・・・


鈴女「主税さん?」


突然の女性の声に主税と小雪は振り返った。


主税「あ・・・・・・鈴女さん。奇遇だなこんなところで・・・・・・」


鈴女「なぜ、上杉さんと主税さんがこんなところに。」


小雪「隣の部屋。氷嬢様の部屋だったのね。やっぱり二人は同じマンションに住んでいたのね。」


主税「知ってたのか!?」


小雪「たまたまだけどね。二人がエントランスからこのマンションに入って行ったところを見たのよ。」


主税「そうなのか・・・・・・必死になって損したぜ・・・・・・それなら、鈴女さん。小雪さん雨に濡れてるからお風呂貸してあげてくれねぇか?」


鈴女「分かりました。しかし、部屋が少し散らかっていまして。」


主税「待て。鈴女さんの少しは信用ならないからな・・・・・・」


小雪「信用ならないってどういうこと?」


鈴女は自分の部屋のドアを開けると玄関からゴミ袋と空き瓶などのごみが散らかっていた。それを見た小雪はあまりの汚さに開いた口が塞がらなくなった。


主税「やっぱウチのお風呂使ってくれ・・・・・・」


3人が主税の部屋に入り、小雪はお風呂場に入りシャワーを浴びていた。その間。主税は鈴女に放課後どういうことが起こったのか詳しく説明していた。


鈴女「なるほど・・・・・・そうだったのですね。」


主税「俺も突然の大雨でびっくりしたからな。」


鈴女「なぜ、そんなに必死に弁明しているのですか?」


主税「だって、鈴女さん。ムッとした表情をしてたからさ。」


鈴女「え?」


鈴女は表情を大きく変えているわけではなくちょっとふてくされている顔をしていた。


主税「だから怒らせたのなら悪いと思って・・・・・・」


鈴女「いえ、しょうがないと思います。」


しかし、無意識にそのような表情をしていたのは訳がある。それは文化祭の休憩中で主税と別れた後の出来事である。鈴女は階段を下りていると下の階で小雪が立っていた。


鈴女「上杉さん。どうしてこんなところにいるのですか?」


小雪「氷堂さん・・・・・・いえ、氷嬢様。話があるの。」


鈴女「話とは、どのような話でしょうか?」


小雪「氷嬢様は、主税くんのことどう思っているの?」


突然の質問に表情を変えず鈴女は答えた。


鈴女「主税さんとはクラスメイトですね。」


小雪「クラスメイト・・・・・・ただのクラスメイトが名前呼びだなんておかしいと思うのだけど?」


鈴女「そうなんですか?」


小雪「・・・・・・私、主税くんのことが好きなの。」


鈴女「・・・・・・。」


無表情を貫いているが、内心は驚いていた。


小雪「もしかしたら、主税くんのことが好きなのかと思ったけど勘違いだったのかもしれないわね・・・・・・」


小雪はゆっくりと階段を下り、そして歩みを止めた小雪は振り返り鈴女に向かってこう言った。


小雪「でもね、やっぱりあなたには負けたくないの。だからここで宣戦布告します!」


小雪が階段を下りたことを確認した鈴女は小雪からの突然の宣戦布告を受けて戸惑っていた。そして、胸を締め付けられる痛みを感じた。


鈴女「宣戦布告・・・・・・」


プロローグが終わり、再び主税の部屋で主税と鈴女が小雪がお風呂から上がるのを待っていた。テレビをつけると大雨警報で電車が全線見合わせと報道していた。


小雪「お風呂ありがとう・・・・・・」


声がして主税と鈴女は小雪の方向に顔を向けた。着替えは鈴女が部屋から持ってきた水色の部屋着を着ていた。


主税「どうしたんだ?そんな暗い表情して。」


小雪「胸囲の格差社会・・・・・・」


主税「何言ってんだ?」


鈴女「もしかして・・・・・・下着のサイズあっていませんでしたか?」


主税「(そういうことか・・・・・・)」


鈴女「ところで上杉さん。電車止まっているとのことなのですが、家に帰れそうですか?」


小雪「え・・・・・・どうしよう。家に帰れないな。」


小雪の家は歩いて数十分の場所なので電車を使わずに帰れるのだが、嘘をついてしまった。


主税「しょうがないな・・・・・・雨は深夜まで降り止まないみたいだし今日は泊まった方がいいかもな。」


小雪「そ・・・・・・そうだね。」


主税「家族に連絡した方がいいぜ。心配しているだろうしな。」


小雪「うん、そうする。」


小雪は親と連絡を取っている間。


主税「さすがに俺の部屋に泊めるわけにはいかないから、後で鈴女さんの部屋を掃除するからな。」


鈴女「すみません。」


主税「いつものことだろ。」


小雪が電話を終えてリビングにやってきた。


小雪「お母さんから許可もらってきたよ。」


主税「ならよかった。なら晩飯にするか・・・・・・」


小雪「そうだ。ご飯っていつも主税くんが作っているの?」


主税「なっ!?もしかしてそのことも知っているのか?」


鈴女「私、料理がからっきしで・・・・・・」


小雪「本当に生活力がないんだね。」


鈴女「申し訳ございません・・・・・・」


小雪「いいって、むしろ安心したわ。完璧超人だったら勝ち目無いって思ってたけど。」


主税「勝ち目無いって何と戦ってんだよ・・・・・・」


主税は赤のエプロンをつけて晩御飯の支度を始めた。残った鈴女と小雪はソファに座って待っていた。


小雪「もしかして、毎日晩御飯用意してもらってるの?」


鈴女は静かにうなずく。


小雪「それで好きになって無いって本気で言っているの?もうほぼ同棲同然じゃない!?」


鈴女「同棲・・・・・・」


小雪「(羨ましい・・・・・・好きな人と部屋が隣で生活って・・・・・・漫画のようなラブコメ展開じゃないの・・・・・・)」


鈴女「上杉さん?」


主税「そうだ。小雪さんって嫌いな食い物はないのか?」


台所から主税が聞いてみた。


小雪「甲殻アレルギーなのでそれ以外でしたら大丈夫です。」


主税「そうか、なら大丈夫だ。」


そう話すと、再び調理に戻った。主税が調理している間、鈴女と小雪は勉強をしていた。


小雪「ここ・・・・・・この公式で解けばわかりやすいのね。」


鈴女「はい、しかし上杉さんは基礎も応用もしっかりしています。成績上位者なのも頷けます。」


小雪「(これが成績一位の実力・・・・・・)」


鈴女「こうやって、誰かと一緒に勉強するのってとてもいいものですね・・・・・・」


小雪「それって・・・・・・今までは一人で勉強していたってこと?」


鈴女「はい、主税さんがここに引っ越してくるまではずっと一人で過ごしていました。」


小雪「そっか・・・・・・(氷嬢様、そういうところは私の似ているんだ・・・・・・周りと話が合わずに孤立していった私と・・・・・・だからこそ、初めて優しく親しくしてくれた主税くんに私は惚れたんだ。)」


主税「お前ら、晩飯出来たぞ。」


主税に呼ばれ、鈴女と小雪はダイニングにやってきた。


小雪「この料理って?」


主税「「ビーフストロガノフ」を作ってみたんだ。」


小雪「初めて聞いた名前。」


主税「ロシアの牛肉料理だよ。」


小雪「いただきます。」


小雪はスプーンですくい、口に運んだ。


小雪「・・・・・・うん!おいしいよ!」


主税「それはよかった。」


鈴女はいつものごとく、黙々とビーフストロガノフを食べていた。


小雪「氷堂さん反応ないけど美味しくなかったの?」


主税「いつものことだよ。反応はないけど美味しいってことだから。」


小雪「そうなんだ・・・・・・(氷嬢様、羨ましいな・・・・・・毎日こんなおいしいもの食べられて)」


ご飯を食べ終わった3人は


主税「もう8時か。そろそろ片付けに行くか。」


その時、窓の外が光り数秒経って雷の落ちる音が聞こえた。


小雪「ひゃあ!」


主税「結構近かったな。もしかしたら停電になるかも?」


小雪「ありえそうだn・・・・・・」


すると次の瞬間。突然辺りが暗くなった。


主税「マジで停電しやがった!二人とも無事か?」


小雪「私は大丈夫。」


主税「鈴女さんは無事か?」


しかし声がしない。


主税「どこに行ったんだ?」


探そうと動こうとすると右腕をぎゅっと掴まれた。


鈴女「・・・・・・待ってください。」


腕を掴んでいるのは鈴女だった。腕を抱きしめる感じで掴んで離さないようにしていた。


主税「鈴女さん・・・・・・震えてる。もしかして雷怖いのか?」


声はしないが、震えているのだけは掴んでいる腕の感触で分かる。そして明かりがついた。


主税「!?」


腕を抱きしめていた鈴女の目から涙が溜まっていた。


小雪「氷堂さん。大丈夫!?」


主税「とりあえずその場に座って落ち着くんだ。それか、部屋に戻るか?」


鈴女「・・・・・・無理です。雷が怖くて動けそうにありません。」


主税「そうか・・・・・・雷が苦手だったのか。」


鈴女「すみません。誠に勝手ではございますが・・・・・・今晩、主税さんの部屋に泊めていただけませんでしょうか。」


主税・小雪「へ!?」


第17話「完」

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