第3話 珠蒼の力は……?


「デッキできたぞ」


「ぐふふ……俺らがもらうためにデッキ組んで……かわいそうなやつめ」


 このゲームは対戦で負けるとエースカード……まあ拒否カード以外のカードから一枚取られるからな。

 少し時間が経てばレアカードの入手法は大体これになってくる。


「さて……じゃあバトル開始だ!」


 俺は久々の初心者デッキ主体だなって懐かしさを感じると共に、久々のバトルの高揚感を味わっていた。


(誰に喧嘩売ったのか……思い知らせてやる!)



〜〜〜〜〜


「先行は譲ってやるよ、来な」


「マジで? サンキュー」


 ヤンキーはそういうと最初の手札を構えた。


 俺も手札交換を終え、構える。


「じゃあ俺のターン。」


 スケルトンデッキが人気のない理由は……骨だからというのもそうだが低コストで貧弱型だからだ。


 とどめまで持って行けないからいくら早くてもリーサルプランのない最弱デッキとされている。


(最初のパックで鈍足アタッカーを引くだけで強デッキになるのにな)


 初めこれに気づきスケルトンデッキで有名になった人物がいた。


(今回は……俺の方が先らしいな!)


「アサルトスケルトンを召喚!」


 俺はコスト1……毎ターン貯まるコストを1使ってアサルトスケルトンを召喚する。

 典型的な速攻スケルトンだ。

 スタッツは2/2、つまりパワー2体力2だ。


 このゲームでは相手のセンターモンスターがいない状況で相手リーダーを殴る……いわゆるダイレクトアタックで相手リーダーの体力30を削る必要がある。


 出たターンには攻撃できない、などというルールはないが、先行でダメージを受けないよう後攻プレイヤーは先行プレイヤーの最初のターンにシールド次の自分のターン開始時まで攻撃を塞ぐ能力を5得ている。


「アサルトスケルトンで攻撃!」


 そのため、この攻撃ではダメージを与えられない。


「ギャハハ! 先行ターンにはダメージ与えられないんだぜ? 知らないのか?」


「兄貴やめてください、初心者なんで仕方ないでしょ、俺らが恥ずい」


 与えられないわけじゃないんだが……

 何もわからずヤンキーは笑ってるな。

 先行ターンに殴るのは大きいメリットがあるぞ。


「俺様のターン! ピクシーを召喚!」


『ピクシー:コスト1 スタッツ1/3 能力:キャラを攻撃時そのキャラに1ダメージ与える』


「やっぱり……フェアリーデッキか!」


 フェアリーデッキは妖精のビジュアルも相まって一番人気のデッキだ。中速で相手のセンターをガン処理しながら顔面を殴るデッキだ。

 そして……良く初心者が最強だと勘違いしやすいデッキでもある。


「フハハ! 攻撃時1ダメージ! そして攻撃で破壊だ!」


 合計2ダメージ受けたスケルトンは倒れる。

 だが、モンスターは当然タダではやられない。

 モンスターも攻撃されれば攻撃し返す。


 ピクシーは反撃の2ダメージを受け、体力が1となった。


「俺のターン、ドロー」


 だが、そっちが速攻と言うならばこっちは……


「コスト3 ゴーレムを召喚」


「! SRカードか!」


 お互い動きのなかった2ターン目を挟み、俺はパックで手に入れたゴーレムを召喚した。


「だけど……こっちはもっといいカードを持ってるぜ! ドロー! 舞踏妖精ピピスを召喚!」


 ピピス……フェアリーデッキに付属しているSRカード、つまり切り札的存在だ。

 ピピス:コスト3 スタッツ3/5 能力:攻撃時相手センターモンスターに2ダメージを与え、モンスターを倒した場合攻撃力がプラス5される。


「奴の顔面に3ダメージだ!」


 だが、俺はニヤリと笑う。


 センターでない……待機区域にいるゴーレムの目がきらりと光る。


「能力発動」


「何!?」


「──ダメージをゴーレムが肩代わりする。そして能力発動」


 ゴーレム:コスト3 スタッツ0/5 能力:センターが空いている場合、自分のダメージを肩代わりし、ダメージを与えたモンスターに2ダメージ与える。


 ゴーレム……典型的な防御キャラだ。こいつは昔……いや未来か? 異名を持つレアカードの部類だった。その名は……


「──速攻殺し」


「なんだそいつ!? チートだろ!!」


 小さいダメージを重ねる速攻デッキ……特に連続攻撃デッキなんかはゴーレム一枚で何もできなくなる。


「さあ……でもこのカードは現に今実装されてるぜ?」


「ちっ……」


 そして俺は、エースモンスターを召喚する。


「見せてみろ……珠蒼!!」


 SSR。広場に金色の閃光が爆ぜた。


(これが……SSR演出!!)


「なっなんだ!?」


「まさかあれって……SSR!?」


 周りから困惑の声が聞こえてくる。


「ばっ……馬鹿な、なんだその光は!」


「さあ……なんだろな?」


 俺はヤンキーにそれだけ言うと、念願の初SSRキャラを召喚した感動を噛み締める。


「珠蒼! お前の能力は……」


 俺は珠蒼のカードを見る。が、そこには……


『珠蒼 コスト4 スタッツ1/6 能力:召喚時このモンスターのカードをデッキからランダムに3枚手札に加える。』


「……は?」


「な、なんだ……雑魚じゃねぇか!」


 マジで言ってんのか?

 サーチできるのは強いが、ランダムであるし、何よりスタッツが低い。


 俺の知ってるコスト4SSRでスタッツ5/7のバケモンとかもいるのに、1/6だと?


「そんな体力じゃすぐ死ぬぞ!? しかも能力はもう無しと同じ……」


 SSRにしては明らかに弱い……弱すぎる。


「はっ……せっかくのレアカードなのに弱くて残念だったな! ギガフェアリーを召喚!!」


 ギガフェアリー:コスト4 スタッツ4/6 能力無し


「おいおい……お前SSRのくせにスタッツ負けしてんじゃねーか!!」


「肩代わりだったな? その忌々しいゴーレムを破壊だ!」


 ギガフェアリーはノーマルカードだ。フェアリーデッキも全部が全部速攻じゃない。こいつがスタッツ担当だ。完全に珠蒼の上位互換の性能をしている。


「ピピス! 今度こそ奴の顔面に3ダメージ!」


「ちっ……!」


 どうする? SSRは役に立たない……スケルトン軍団でなんとかするしかないのか……?


「無理だろ──」


「おい、何してる? さっさとわれ使わんのか?」


 そんな俺に珠蒼が語りかける。


「お前はスタッツが低い……逆立ちしたってギガフェアリーには勝てない……!無駄に死ぬだけだ!」


「ほん……?」


「スケルトンナイトを召喚! 攻撃だ!」


 スケルトンナイト:コスト3 スタッツ1/7 能力:攻撃された時、そのモンスターに2ダメージ


 体力が高いので、こいつをセンターのギガフェアリーにぶつける。


(このままじゃ……ギガフェアリーを倒せずにストレート負けするぞ……!)


「はは、さっきの威勢はどうした! 俺様がさらなる……絶望を見せてやる! ピピス、覚醒だ!」


「何!?」


 覚醒だと……!?


 覚醒とは、キャラカードについてるキャラの強化カードだ。キャラの能力が少し変わり、スタッツが少し上昇する。

 『リゾガル』において、覚醒を使いこなすのは最も重要なことの1つと言える。


 ピピス覚醒:コスト5 スタッツ+1/1 能力を変更:攻撃時相手センターモンスターに3ダメージを与え、モンスターを倒した場合攻撃力がプラス5される。


「……まずい!」


 ピピスの覚醒は、スターターデッキには入っていない。つまりなんらかの手段で手に入れたのだろう。


 ……フェアリーデッキは人気だ。初日とはいえ、人口も十分に多いし持ってる人も多いのだろう。


(俺に仕掛けたのと同じように奪い取ったのか?)


「ハハハハハ! ピピスで攻撃アタックする時に3ダメージでスケルトンナイトを破壊! 能力でピピスのスタッツは……9/3だ!!」


「ぐあっ……!」


 俺の体力がごっそりと持っていかれる。もう体力は残り21だ。このままだとすぐなくなるだろう。


(万事急須か……)


 俺がそう思ったその時。


「逆立ちしても勝てんとな……? なら普通に立っていればいいんじゃな?」


「……え?」


 珠蒼が俺に、意味のわからないことを言い出した。

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