第29話 石ゾンビ

「ミチオくん、最初に肌が荒れてカサカサになったって言ってたよね。あれはね、ヴァジュラの副作用なんだ」


「どういう意味ですか?」


「ヴァジュラを体内に取り込んだ生物は皮膚が硬質化し、やがて石のような身体になっていく。そして最後には意識が奪われてしまう」


 ボクを襲ったあの男の顔を思い出していた。人間でありながら人間ではないようなヒビだらけの生き物。いや、生き物というよりは動く石像。人形やロボットのように無機質なその動きは


「まるでゾンビみたいだ……」 


「そう。言うなれば“石ゾンビ”だね。そのビジュアルからボクたちの世界では「ヒビワレ」と呼ばれている」


「まんまですね」


「わかりやすいでしょ」


「音だけだとかいわれ大根みたいですね」


 ボクは改めて自分の顔を見た。


 顔には無数のヒビが入っている。特に右目の上から下にかけて大きなヒビが入っている。まるで稲妻のようだ。

 それにさっきの戦い。ボクは手足を引きちぎられた。普通なら出血多量で死んでる。


 でも血は流れなかった。おまけに、今はこうしてくっついている。


「ボクも……ヒビワレなんですか?」


「難しい質問だね。君は今、自分の意識があるよね」


 夜野さんは話を続けた。


「きみみたいにヒビワレと同じ力を持ちながら人間としての意識を保てる人間を僕らは“ヒビビト”と呼んでいる」


 ヒビビト。ヒビワレの力を持った人間って意味だろうか? 

 なんか舌を噛みそうな呼び名だ。


「ヒビワレからヴァジュラが生まれたのか、ヴァジュラからヒビワレが生まれたのかはわからない。でも、ひとつだけ確かなことがある。僕たちヴァジュラ使いは太古の昔からヒビワレと戦ってきた」


「布都野ミチオくん。君には才能がある。ヴァジュラ使いとなってヒビワレと戦ってくれないか?」

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