第24話 意識あるのか?
◆
「金沢亨か?」
背後で低い声が耳に響いた。
その刹那、男の体が吹き飛ばされた。
声の方向を見る。
少年がいた。
背はボクより少し低い。
年齢は同じくらい?
いや、そんなことより、こいつはボクたちと同じ?
少年の顔を見る。
口元は黒いスカーフで覆われていてわからないけど、顔には無数のヒビが入り、鬼の角のような鋭い突起がいくつも生えている。
禍々しい形相だ。
でも、それは右側だけで、左側は人間の肌が露出している。
上半身は裸。左側は人間、右側は頭部と同じように無数のヒビワレが覆い、岩の鱗のようになっている。
足元は裸足だが、膝までの黒いハーフパンツを履いている。
ボクを襲った男よりも、化け物じみた風貌だ。
「答えろ。お前は金沢亨か?」
「ギルルルゥ」
男は人間の声とは思えない奇声を発した。
「20%」
そう少年が呟くと、空中を漂う閃輝が少年の拳に集まる。
やがて閃輝は黒光する籠手へと変わっていく。
そして、拳の先端には無数の鋭い棘々。
「ギュェェ!」
黒い拳で少年は男をぶん殴った。
男の体は粉々に砕け散り、光の粒だけが残された。
男の消滅を確認すると、少年がボクを睨む。
少年の顔には鋭い亀裂が生まれている。
コイツも、あの男の仲間……?
「答えろ」
次はボクをヤる気か?
「お前は人間か?」
「え?」
「名前を言え。言わなければ、ヒビワレと見なし粉砕する」
ヒビワレ?
「ボクは人間です。多分、人間です。ミチオ。布津野ミチオです」
ボクは自分の名前を目の前の少年に伝えた。
◆◆
「わかった」
名前を言ってもいいのかと一瞬躊躇したが、ここでは何も言わないことの方が危険だと思った。
少年は周りを見回す。
「あの腕、お前のか?」
「うん。あと、足も二つ、どこかに落ちてると思う」
何を言ってるんだボクは?
少年は、男が引きちぎったボクの右手と両足を掴むとボクの元に持ってきた。
そして、引きちぎられた右手を傷口に押し当てた。
「動くな。ヴァジュラが結合部の繊維を統合する」
ヴァジュラ? 何を言ってるんだ。こいつは?
聞きなれない単語を言う少年にボクはイラつく。
切断部分を少年が触る。閃輝が集まってくる。
「吸え。治癒が早まる」
「吸えって、何を?」
少年は、左手だけボクの右腕から離すと、さっきまで男の体だった大気中を漂っている光の粒を握った。
そして、ボクの口に無理やり突っ込んだ。
「なにをするんで」
すか? と言おうとした瞬間、ボクは自分の体に起きた変化を実感した。
痛みが消えていく?
「ヴァジュラを吸い込め。治癒が早まる」
ボクは光の粒を吸い込む。
「足もくっつける。腕は自分で支えろ」
そういうと少年はボクの右腕から手を離した。
少し不安定だったけど、手はくっついていた。
少年はボクの足にも同じことをした。
ボクは黙って光の粒を吸い込んだ。
光の元が男の体で、殺された女の人も混ざってると思うと不快感と罪悪感が同時に襲ってきた。
でも今はそれどころじゃない。
◆◆◆
「キュウちゃ〜ん!」
甲高い声が遠くから聞こえる。
「急に走り出すからびっくりしたよ……って何これ?」
メガネをかけた白衣の男がボクたちに近づいてくる。
「右腕、右足、左足を食いちぎられた男を救護していました」
「彼が金沢亨?」
「いえ。おそらく先ほど粉砕したヒビワレが金沢亨です。衣服はそこにあります」
メガネの男が男の着ていたスーツのポケットに手を入れると、財布を取り出す。
どうやら免許証を確認しているみたいだ。
「そうみたいだね。で、彼は?」
「ヒビワレと戦ってました」
「一人で?」
「はい」
「それで意識は?」
「名前を名乗りました」
「へぇ~」
メガネの男がボクの方に近づいてくる。
髪はボサボサ。メガネの向こうにみえる目は人間のソレだと感じた。
マスクをしているがニヤニヤしているのは雰囲気から伝わる。
着ているのはよれよれの白衣のコート。医者か科学の教師だろうか?
「どうやら君はヒビビトのようだね。ヴァジュラは使えるのかい?」
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