第12話 11月の海は寒かったけど、潮風が心地よかった

 閃輝を一箇所に集め、形を変化させることには成功した。

 

 最初に作り出したのは5ミリほどの菱形の石。

 出来上がったものはガタガタで不格好だったが、最初にしては上出来だと思った。


 一箇所に閃輝を集めて、細部を少しずつ削り落としていく。

 

 四角、丸、三角。まずは平面の図形を思い浮かべ、次第に立体的な物体に。


 閃輝の角にイメージを集中し、やすりをかけて削り落としていくというイメージを強く念じる。


 この作業には、小さな彫刻を作るような楽しさがあった。

 でも、、わずか数分で疲労困憊となってしまい、長くは続けられなかった。


 その結果、目の前に残るのはなんとも不恰好な石たちだ。そして、集中力が途切れると石たちはすぐに崩れ落ちて塵芥となり、大気の中に消えていった。


 今は無理だけど、もっと複雑な形を作り出せるようになりたい。


 崩れ落ちる閃輝を見るたびにそう強く思った。

 

 でも一方で、こんなことをやって、何の意味があるのかと、疑問を持ちはじめていた。


 閃輝をいじり始めてから、勉強に手につかず、学校の授業についていけなくなった。


 元々、一生懸命がんばっても5段階評価でギリギリオール3という成績だったから、勉強をサボれば途端に落ちこぼれていくことはわかっていた。


 だけど、閃輝はやめられない。


 一つの作業に没頭していると脳内麻薬が出るのだろう。


 閃輝の探求に時間を忘れて没入し、集中力が尽きると疲れて寝てしまう。そんな無意味な日々を繰り返していた。


 それでも留年や退学だけは避けたかったので、遅刻だけはしないように気をつけていた。でも、夜ふかしが増えた影響で起床時間がだんだん遅くなり、ギリギリで家を出ることが増えた。


 ある日、寝坊して間に合わないことが決定的になった時、ボクは学校に行くのを諦めた。


 とりあえず電車には乗ったが学校のある駅では降りずに、遠く離れた海辺の駅で降りて、浜辺をフラフラと歩いてみた。


 11月の海は寒かったけど、潮風が気持ち良かった。


 怪しい人だと思われたくなかったので、ふだんは外で閃輝をいじらないようにしていた。でもこの日は人がいなかったので、手のひらに閃輝を集めてみた。

 

 ゆっくりと光の粒が集まるとぶつかり合い、やがて手のひらに収まるぐらいのサイズになった。ボクは小さな閃輝を軽く握ると、海に向かって放り投げた。


 閃輝はすぐに砕け散るかと思ったが、水面を跳ねて遠くに飛んでいった。


 閃輝で「水切り」ができるとは思わなかったので驚いた。

 

 この時は今までとは違う妙な手応えがあった。 

 ひょっとしたら、閃輝はなにかに使えるのではないか? と思った。




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