#239 朝の大激闘

 私は今、とてつもない危機を迎えている。洗濯物を干そうとベランダに出たところで、奴がいたのだ。

 そう、夏にしか現れないやつ──蝉だ。蝉がベランダにいる。ひっくり返った状態で。

 おいおいおい、勘弁してくれ。なんで蝉がベランダにいるんだよ。いるにしてもなんで私の家のベランダなんだ。隣の住人のベランダではダメなのか。

 どうする。まずは生きているか確認しなくては。蝉の生死の確認方法は足が閉じているか、閉じていないか。前者なら死んでいて、後者ならまだ生きている。

 ……前者だぁ。

 ふざけないでくれ。なんでまだ生きている。力尽きているんじゃないのか。くそ、この場合はどう対応するのが正解なんだ。

 ……勘弁してくれ。私は洗濯物を干したいだけなんだ。なんで休日の朝からこんな目に遭わなくてはいけないんだ。


「ん? 細長い棒を当てると勝手に掴まってくれる……」


 ネットで対応方法を検索すると、さっそく出てきてくれた。

 ふむ、試そうにも家に細長い棒なんてない!

 他には! 他にはないのか!?


「……ティッシュを被せる方法か」


 ティッシュを被せると同じく掴まってくれるらしい。

 ティッシュならいいだろう。

 ……無理だ! つまり蝉に接近しなくてはいけないんだろ!? もし近づいた際に蝉爆弾に遭遇したらどうする!? 私は嫌だぞ!! 

 勝手に飛んでってくるのを待つしかないのか……。洗濯物はコインランドリーに行くか……。


「全く、朝から最悪な目にあった」


 私は大きくため息をついて、コインランドリーに向かった。

 余談だが、家に帰ってきた時、蝉は網戸に引っ付いていて、空気の入れ替えをしようとした私に更なる恐怖を与えるのだった……。

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