#110

「おれさ、もし許されるなら、この現実で叫んでみたい台詞があるんだ」

「どうした? 突然」

「こんなに暇だったら雑談のひとつでもしようじゃないか。その話題として『もし許されるならこの現実で叫びたい台詞』ってのをチョイスしたわけ」

「まあ、暇だもんな。いいよ。付き合う。で? どんな台詞を叫びたいんだ?」

「いろいろあるぞ。いっぱいあるぞ」

「ひとつにしろよ」

「んじゃこれさ。『お前を殺す』」

「……どうした? なんか悩み事あるか?」

「んなんじゃねぇよ」

「じゃどうしてそんなセリフになる!? もっと他にあるだろ!?」

「そうか? 殺しが御法度なこの現実じゃ絶対に叫ばないと思ったんだけどな」

「だとしても他にあるだろ」

「んじゃ……『俺はお前を壊したい』」

「だから精神的に悩んでるなら話聞くぞ?」

「悩みなんてねぇよ」

「嘘つけ。セリフの選択が心病んでる人だろ」

「だってこんなの現実で叫べるわけないじゃーん」

「判断基準がわからねぇ」

「お前はねぇのか?」

「……あるよ。一応」

「じゃ教えてくれよ!」

「そうだな……『この物語はフィクションです。現実ではありません。あなた達は作られた存在です』」

「……お前の方が精神病んでねぇか?」

「かもな。100超えりゃネタがもうないのさ」

「え? ネタ?」

「そう、もう限界。だからこれもここでぶった斬る」

「え? ちょっ──」


  終


 

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