#107 幼馴染の夢
『わたし、おおきくなったら、およめさんになる!』
幼馴染の
小さいことはよく『お嫁さんになる』と言っていた。『誰の』を言っていたかは覚えていない。
『私、大きくなったら魔法少女になるの!』
少し成長して、幼稚園に入った頃は『お嫁さん』から『魔法少女』に変わっていた。確か、この頃は日曜の朝にやっていたアニメをよく見ていたからそれに影響されたのだろう。アニメの玩具もよく買ってもらっていた。
『私、大きくなったら先生になりたい!』
小学校に入るとやや具体的な夢を持つようになった。
でもその理由を俺は知っている。幼稚園の先生に恋をして、その先生に会いたくて『先生になる』っていうのが本当の理由だ。
……その時、俺はその夢を応援したくなくなった。
『私、大人になりたい!』
ただ、小学校3年生くらいからだろうか。
また夢があやふやなものに変わっていった。漠然としたもの、『大人になりたい』というものに変わった。
さらに。
『私、部活動をやってみたい!』
この時から、俺はこいつの言うことに首を傾げるようになった。
『私、大きくなったらお腹いっぱいにケーキを食べたい!』
『私、大きくなったらケーキ屋さんになりたい!』
『私、大きくなったらプロの選手になりたい!』
『私、大きくなったら絵を描けるようになりたい!』
『私、元気になりたい!』
『私、長生きしたい!』
次第に千砂の言葉に『大きくなったら』がなくなった。
ある時、千砂が入院したと聞いた。悪性の癌らしい。見舞いに行った時、チューブに繋がれた千紗の姿を見て、俺はとてつもないショックを抱いた。ドラマとかで見るようなものじゃない。あと一歩、何かあったらその人の命の灯火が消える。それが直感でわかるほど、千砂が弱っていた。
千砂が夢を語っていたのは、自分の命が短い体と知った。
最後に千砂は『わ、たし……あっくんと、宇宙に、いき、たい……』と言った。
あれから数十年。
俺は宇宙飛行士となった。
今日は俺たちを乗せたシャトルの打ち上げの日。
「……千紗、行こう。宇宙に」
千砂との願いを叶えるために俺は宇宙飛行士となった。
さ、あいつの夢を叶えようじゃないか。
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