#92 噂の真実
僕の通う高校にはある噂がある。
『中庭にある大きな桜の木下で告白すると、必ず成功する。必ず、だ』。
そんなもの、漫画やアニメの中でした見聞きしたことがない。中学の時、進学する高校のことを調べた時にこの噂を耳にしたけど、僕は信じていなかった。誰かの作り話、本当なわけがない。
けど、入学して最初に目にしたのが中庭にある大きな木。先生の説明では、この木は桜の木だと言う。
噂の信憑性が高まった気がした。
一年生の時、僕の友達やクラスメイトの中にはこの噂を信じて、『彼女or彼氏を作る!』を意気込んでいた奴が何人かいた。もしくはそれが目的でこの高校に進学した人もいるだろう。
でもみんな気づく。
改めて状況を説明しよう。
桜の木はこの学校の中庭にある。
中庭の周囲はぐるりと校舎が囲っている。
もう一度言う。
中庭の周囲は校舎に囲まれている。
つまり、校舎内の誰もが桜の木を目撃できる状態なのだ。
この噂の最大の難点。それは桜の木の下に男女がいれば、それは必然的に告白だと思われてしまうこと。
そして、告白となると、それが全校生徒(先生含む)に目撃されてしまうという事。
断られたら公開処刑に近い。というか、あの状況で告白なんてできるわけがない。
だから、みんなあの噂を実行したくても実行できない。そもそも告白イベント自体起こせないのだから。
それに気づいた僕は、さっさと噂のことなんて忘れて普通に高校生活を送った。
転機は高校三年生の時。
受験も終え、学校へも自由登校となった時。
仲の良かった女の子に呼ばれた。
中庭の桜の木下に。
「あのね……実は、私」
女の子は頬を赤ながらも、恥ずかしそうにしながらも、一生懸命自分の気持ちを言葉にしようとしている。
そこで気づく。
校舎からの視線。今学校にいるのは主に後輩たち。面白そうなものを見つけた、といった感じにコチラを見ている。
だが問題はそこではない。
今目の前にいる女の子は、学校でも人気の部類の子。
そんな子が僕に告白しようとしている。
中庭の桜の木下で……。
『中庭にある大きな桜の木下で告白すると、必ず成功する。必ず、だ』。
脳裏に浮かぶこの学校の噂。
特に『必ず』の部分。
そう、この噂は本当だったのだ。
本当だということに気づいてしまった。
だって、
「あなたのことが好きなの。私と付き合ってください!」
こんな大勢の前で勇気を出して告白してきた女の子を、振ることなんで絶対にできないのだから。
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