第7話 名前のない子ども
【アーロン視点】
キースが、
まぁ、当然よね。
だってうちの子、
だからって「欲しい」って言われても、やるもんか。
コイツは、オレのもんだ。
いくら
「くれ」「やらん」と、絶対に負けられない戦いの結果。
ついに、キースが負けを認めた。
しかし、この男は、とことん諦めが悪い。
しょぼくれてたかと思うと、突然開き直って、力強く
「よし、決めた! 俺、ここに住むわっ! そしたら、飼ったも同然っ!」
「は? てめぇ、何勝手に決めてんのよ」
「だって、アーロンがくれないんだもん! 俺が来るしかないじゃんっ!」
「てめぇは人間の街に、自分の家があんだろうが」
「そうだけどぉ……」
キースは、またしょぼんと肩を落とした。
キースは人間として、人間の街に住んでいる。
それも「
国王の
国王に
早い話が、国王の相談役。
キースの
よくもまぁ、そこまで
それだけ「人間を
キースの一族は、頭が良い。
だから、「人間」の
何をして、何を
どのようにして、「人間」に都合の良い世界を作り上げてきたか。
どれだけ
どれだけ
どれだけ
どれだけ歴史を
自分達にとって、
「真実の歴史」を知る魔の者は、
知れば知る程、強い
「真実の歴史」を知っているから、
だから、キースは人間の政治を裏から操っている。
人間の歴史に残らないように、
政治が動けば、多くの人間達が動く。
実際に、
キースは
マジで、
「森の
やり方が、回りくどい?
そりゃそうよ。
だって、わざと、回りくどくしささってんだから。
直接人間を殺した方が、早いに決まっている。
それじゃ、すぐに滅ぼせちゃうじゃん。
「魔の者」の人間への
人間を
目的を果たす為なら、どんな努力も
コイツは、そういうヤツなんだよ。
「お名前は、なんていうのかな~?」
キースは、小動物を愛でるようなデレデレの笑顔で、
途端に、
キースはキョトンとして、
「あれ~? どうしたのかな~? お名前、言えないのかな~?」
「あ~……そいつ、名前ねぇのよ」
すっかり忘れてた。
そういやオレ、名前付けてなかったわ。
「お前」で、今まで何の
「なんで?」
「ソイツの親、名前も付けずに、
「はぁっ? なんだよ、それっ?」
オレの話を聞くなり、キースは
キースは暗い顔をしている
「こんな
「だべな。人間の親、マジカスゴミ」
「人間、許すまじ! ホント最低だぜ、人間ってやつはよっ!」
オレとキースは、人間を
気が付いたら、
ワンコも「くぅんくぅん」と鳴いて、
ハッとして、口を閉ざす。
どんな
いくら
「愛されないのは自分が悪いから」と、自分を責める。
「捨てられたくない」「愛されたい」と、親にすがる。
親をけなされたら、
幼い心を傷付けて、泣かせてしまった罪悪感はハンパない。
うちらは慌てて、
「うわぁ~っ、ごめんごめんっ!」
「うちらが悪かったっ!」
うちらは
🌞
【キース視点】
いつまでも名無しのまんまじゃ可哀想ってことで、名前を考えることにした。
とはいったものの、どんな名前が良いんだろ?
本人の
アーロンが
アーロンが、
「お前、どんな名前が良いの?」
「おにいしゃんが付けてくれるなら、ボク、なんでもいいよ」
「そういうこと言ってると、『ぼろぞう』とか付けちゃうぞ」
「おにいしゃんがいいなら、ボク、それがいいでしゅ」
なんつう、良い子なんだ。
けなげすぎて、泣けてくるぜ。
こんなに大人しい
なんかこの子、
街で見掛けた人間の子どもは、もっと可愛げがなかったぞ。
わがままばっか言って、だだこねてんの、何度も見た。
ふたりの話を聞いて、俺は呆れ果てて深々とため息を吐く。
「『ぼろぞう』なんて、クソダサい名前は俺がイヤだ」
「なんでよ? 本人は、良いっつってんぞ? 『ぼろぞうきん』略して『ぼろぞう』」
「お前らのネーミングセンスには、ガッカリだよ。俺がもっと良いの、考えちゃる」
こんな
もっと似合う名前を付けてやりたい。
かがんで、
「お前さ、なんか好きなもんとかねぇの?」
「すきなもの? えっとね、パパとママがだいすき」
は? コイツ、まだそんなこと言えるのっ?
捨てられたのに。
もう二度と、両親から愛されることはないのに。
今でも両親が自分を愛してくれると、信じ続けているんだ。
なんて、可哀想で
「パパとママの次に、好きなのは?」
「うんとね、えっとねぇ……おにいしゃんとわんわんがすき」
「他に好きなものは? 好きな色とか、好きな歌とか」
「おうた、うたうのすき」
それを聞いて、テンションが爆上がりした。
「マジで? 俺も、歌好きなんだよね。歌ってみてくれる?」
「じゃあ、えっと……」
透き通った柔らかい歌声が響き渡り、心を癒してくれる。
歌詞は物語調になっていて、メッセージ性のある内容。
歌う
久し振りに、全身に鳥肌が立つぐらい感動した。
なんだこれ! 最高じゃんっ!
これはまさに、俺が求めていたヒトの音楽。
ヒトが
歌の翼を持つ天使が、俺の前に舞い降りた。
ヤバいっ、マジで
めっちゃ欲しいっ!
「やっぱ、コイツちょうだいっ!」
「やらんっつってんべやっ!」
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